新春対談:トップ2人が見据える2025年のフラーとデジタル
「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」をミッションに掲げるフラーにとって、2024年はどのような年だったのでしょうか。また、2025年はどこに向かうのでしょうか。トップ2人が語りました。
2024年を表す一文字は?
ーーお二人にとって2024年はどんな年でしたか?
山﨑:2024年を一文字で表すと、 私は「携」です。
フラーは2024年6月にヤプリおよび電通グループとそれぞれ資本業務提携を結びました。そこに至るまでには準備や交渉、実際の取り組み開始と提携にまつわるさまざまな事柄がありました。フラーを表す2024年の一文字として最もふさわしいと思います。
ーー渋谷さんはいかがでしょうか?
渋谷:僕も会社としてはやはり資本業務提携が一番大きかったと思います。そういう意味で、僕はフラーの2024年を表す一文字として提携の「提」がふさわしいんじゃないかなと思います(笑)。
山﨑:うわー!そう来たか!(笑)でも間違いないね!
渋谷:実際、僕にとってはそれぞれとの提携を実現するところまでが大きな仕事でした。長い時間と手間をかけて提案や交渉を重ね、こうして形にすることができたのは本当に大きなことでした。2024年を表す一文字として「提」は本当に心からしっくりくるなと、こうして話しながらしみじみ感じています。
そして何といっても、アルビレックス新潟がルヴァンカップで準優勝して、J1にも残留したことは何より大きなトピックでした!
山﨑:わかる!僕も決勝戦は国立競技場で周りのアルビのサポーターとともに声が枯れるまで応援しました。本当にいい試合でしたね。
渋谷:新たな取り組みという観点では、2024年はフラーとして初めて北海道に社員を配置し、活動の拠点としてEZOHUB SAPPOROを契約しましたね。
やはり変化が多いと言われている辰年だけにフラーを取り巻く環境においても色々な変化がありましたが、総じていい一年だったなと思います。
資本業務提携で見えたもの
ーー資本業務提携のシナジーや波及効果はいかがでしょうか?
山﨑:提携をきっかけに一緒にイベントを開催したり、後述するものづくり勉強会にご参加いただいたりと、さまざまな取り組みが始まりました。
本社が新潟と柏の葉という場所柄、フラーはなかなか交流が生まれにくい状況にありますが、こうして他社との深い交流ができることは本当に素晴らしいと思います。
渋谷:これまで自分たちだけで考えていた状態から、提携を結び交流を深めることでフラーについてより俯瞰して見ることができるようになったのも大きな波及効果です。
山﨑:本当にそうですね。実際にヤプリと電通のお二人が社外取締役として参画していることは凄く大きいです。
中から見たフラーについて、冷静な目で客観的かつ具体的な助言をいただけるのはとても心強く、本当にありがたいです。2社と資本業務提携を結んで良かったなと日々実感しています。
そして、この2社との提携を含めてフラーとしての中長期の成長戦略を描けることは、ものすごくポジティブなことだと思っています。
より戦いやすい市場環境に
ーー2024年のアプリ・デジタル関連で特に印象に残っているトピックは何ですか?
山﨑:AppleのiPhone 16 proMAXを発売後すぐに購入したのですが、その進化が全然無くて個人的に衝撃を受けました。ハードとしてのスマホの進化はもう終わったのではとすら感じました。
私は一人のデザイナーの立場から15年以上に渡りスマホ市場を見てきました。新しいものが出るたびに明らかに性能が上がったり機能が増えたりといった進化を体感できていたのですが、初めてそれが体感できませんでした。
これはものすごく大きいなと思っています。「ムーアの法則」ってあるじゃないですか。半導体集積回路の集積率が18〜24カ月で2倍になって上がっていくという、半導体を使ったデバイスの性能革新のペースを説明する法則です。そのムーアの法則が終わる前に先に人間が体感できる速度が終わってしまったわけですから。
ハードウェアとして人間が体感できる部分でのスマホの進化は限界が来た一方、僕はスマホのこれからの進化は中身にもっと寄っていくなと思いました。AIの搭載もソフトの進化の一つと言えるでしょう。フラーがより戦いやすい市場環境が到来すると感じた瞬間でした。
ーー渋谷さんはいかがですか?
渋谷:ゲーム関連で久々に来たなと思ったのが「Pokémon Trading Card Game Pocket (ポケポケ)」ですね。久々に老若男女みんながやっているスマホゲームが出てきたなと思いました。
ソシャゲが成熟してジャンルや守備範囲ごとに細分化される中、人々の共通言語として機能するような、みんなが話題にしているゲームはもうできないのかなと思っていました。
そんな中でポケポケは、世代を超えた人々の共通言語の一つとしてゲームタイトルが機能する姿を2024年の現代に示したわけです。
ソシャゲというマーケットがかなり確立してきたかと思いきや、ポケポケが出てくるーー。そんな成熟市場が再活性化する形は、今後もジャンルや分野を問わずありうるんだろうなと思わせるトピックでした。「mixi2」もいまきていますしね。
エストニアで見たITと行政の関係
渋谷:2024年は海外にもよく行きました。11月には新潟経済同友会2040・アントレプレナー委員会の視察でエストニアを訪問したのですが、政府のデジタル化がめちゃくちゃ進んでいて衝撃を受けました。
例えば日本の場合、子供の保育所の入所申請にめちゃくちゃたくさんの書類を書かなくてはいけなくて、自分の住んでいる地域だとそれぞれの書類に7回も住所を書くところがあるようです。
一方、エストニアであればマイナンバー紐付けでログインすれば1回も紙ベースで住所を記入する必要がありません。一度提出した住所を本人の同意のもとで行政機関が参照できる「ワンスオンリー」という仕組みがあるからです。
山﨑:エストニアにはそんな仕組みがあるんだね!
渋谷:さらに、エストニアではスタートアップの公共調達もめちゃ進んでいました。教育、学校、行政など本当にたくさんのサービス構築がデジタルで必要になるのですが、エストニアではその多くをスタートアップに発注しています。だから、新しい会社がどんどん生まれるんです。
一方の日本の場合、経済産業省の資料によると、国などの公共調達において創業10年未満の中小企業からの契約比率は2022年度実績で1.1%と低い状況です。そんな中でむしろ地方自治体からスタートアップからの公共調達を進めていけば良いのではと思いました。
日本はDXと言ってはいるものの、行政含めて日本全体のDXはまだまだ途上です。IT企業としてやれることはたくさんあるなと強く感じています。
フラーの今の強みとは
ーーフラーの業績はいかがでしょうか?
山﨑:2024年は上場中止からもう一度立て直して事業基盤を固めた年でした。フラーのメンバーがそれぞれの立場で本当に頑張ってくれた結果、売上・利益ともに今のところ順調に成長していけそうな手応えを感じています。2社との提携も相まってより理想的な形で事業基盤が固まったと見ています。
ーーフラーの企業としての独自性や強みは今、どんなところにあるでしょうか?
山﨑:フラーの強みは、ユーザー体験の文化を持っていて、それに会社ごととして取り組んでいる点です。
デザイナー出身の自分からすると、個人でユーザー体験をすることはすごく簡単なことですが、それをデザイナーだけでなくてエンジニア、ディレクター、そして全社員を巻き込むとなると、格段に難易度が上がります。
お寿司を食べたりキャンプに行ったりというこうした体験は、一見するとお金や時間を無駄に使うことにも見えてしまうため、会社を経営する自分たちが良しとしないと会社ごととしてなかなか実現しないからです。
それが会社の文化として浸透できていることは、他の会社には一朝一夕に真似できないフラーの強みです。フラーがご支援させていただいているさまざまなプロダクトやサービスにもその文化が生かされています。
実際、私は社員採用の最終面接に全て出席しているのですが、候補者からもフラーのユーザー体験についてよく質問されます。会社の強みの根源の一つなのではないかと日々感じさせられています。
もう一つは、これはヤプリと電通との資本業務提携が実現した大きな理由の一つでもあるのですが、フラーが本当に良いものづくりをしているということです。
僕らとしてはユーザー体験や良いものづくりができる文化をずっと維持していかなければならないと思いますし、そのためにできることを2025年も継続していきたいと思います。
渋谷:やはりものづくりのサイドが相対的に見て圧倒的なマジョリティーであることがフラーの強みであり、それがカルチャーに全てつながっていると思います。
ビジネス的な外とのつながりや機能の強化は、昨年結んだような提携などによって一定程度補うことができます。
しかし、会社を形作るコアなカルチャーは作るのにすごく時間がかかりますし、再現も難しいものです。フラーの強み・独自性は、そんな長年取り組まないとできないカルチャー作りにあると思います。
例えば、アフターコロナの時代に入ってリモートワークをそもそもどうするかといった問題がさまざまな企業で浮上していますよね。会社として完全にリモートワークを廃止したり、ハイブリッドにしたりと色々な選択肢がある中、フラーは特に出社指定日を設けたり強制をしなくても、結構な数のメンバーが会社に来ています。
「世界一、ヒトを惹きつける会社を創る」をユメに掲げるフラーにとって、オフィスがみんなが行きたい場所になっているというのは、そもそものフラーのカルチャーがなせるものだったりするでしょう。
また、2024年は新潟本社に最新のダーツマシンを会社に導入したのですが、みんないつの間にか上手くなっているんですね(笑)。
自然に会社に集まってみんなダーツが上手くなっていることも、カルチャーがなせる自然体で働くということであり、会社がみんなが行きたい場所になっているということだと思います。そんなカルチャーがごく当たり前に存在することが強み・独自性だなと。
山﨑:実は、ちょうど先週末は仕事が終わった後、夜中の3時まで新卒2年目の社員らとずっとボードゲームのカタンで遊んでいました。日中に家で仕事をして、夕方に会社に行って少し仕事をした後で会社のバーで飲んで、そして会社で3000冊の漫画を読んだりボードゲームをしたりして遊ぶ…これって実はすごいことですよね。
渋谷:会社の中でのカルチャーづくりもしくはでき上がっているカルチャーがもたらす組織力はフラーの大きな強みだと思うんです。
全社でのものづくり勉強会が成立する理由
山﨑:フラーのカルチャーにもつながる取り組みで個人的に2024年に印象に残っているのが、ものづくり勉強会です。フラーのものづくりのカルチャーをより強めたいと思い、私の発案で始めました。
これはまさに先ほど渋谷が言っていたように、ものづくりに携わる人が多い会社だからこそできることだと思います。
渋谷:たしかに!毎回すごいよね!全社員で勉強会ってなかなか真似できないことだと思います。
山﨑:ほぼ毎回、オンライン含めて100人以上の社員が参加しています。フラーの中でも人気のコンテンツです。ものづくり勉強会で発表者からものづくりのヒントを得て、自分のものづくりにフィードバックすることができる、そんなフラーのものづくりの強みをいい形で循環させているようにも思います。
2025年に注力したいこと
ーー2025年に会社として注力したいことは何ですか?
山﨑:2025年に注力したいのは、2社との提携による実績をしっかり作ることです。
2024年はお互いの会社間で交流を深めたりさまざまな枠組みをスタートさせるなどして提携の土台が整いました。2025年はいよいよ実績を作ることが求められる1年だと思います。
渋谷が提携を結んで連携するところまで舞台を整えてくれたので、そこから形にして舞台を成功させることが自分の役割だと思っています。数的な成果として出していきたいです。
やると決めたからにはちゃんと実績を持ってこの提携を絶対に成功させたいです。
渋谷:提携を実らせることを含めて、フラーとして世の中に面白いニュースを出していける一年にしていきたいですね。
山﨑:そうですね、きっと派手なニュースを出していける一年になるんじゃないかと思います。
ーーお二人それぞれ個人としてはいかがでしょうか?何か頑張りたいこと、目標はありますか?
山﨑:この歳で「全力で働く」をやりたいです。年齢的には30代半ばに差し掛かり、体力的に流石に20代の頃にくらべると無理が効かなくなっていますが、この歳だからこそあえてこれまで以上に仕事に全力で臨みたいです。
ーー渋谷さんはいかがですか?
渋谷:そうですね〜。個人的に、今年は革命を起こそうと思います(笑)。
山﨑:わー!来た(笑)!
渋谷:2024年は新潟に戻って4年が経ち、ベンチャー・スタートアップのエコシステムもいい感じになってきて、そろそろ新潟での自分の仕事は終わったかなとも思っていました。
そんな思いを持っていた中で24年11月にフィンランドに行ったんですね。「スラッシュ」というヨーロッパ最大のスタートアップイベントに参加するためです。
会場となる首都のヘルシンキは人口約65万人と新潟市よりも10万人以上少ないのにもかかわらず、ヨーロッパ最大のスタートアップイベントができるわけです。ヨーロッパ中から何万人ものスタートアップ関係者がヘルシンキに集まる様子を目の当たりにした時、東京じゃなくても大きなことができるじゃないかと確信しました。
また、12月は毎日のようにスタートアップ関連のイベントに登壇していました。一つ目に登壇してタクシーが用意されていてそれに乗って二つ目の登壇会場に向かって、そのあとでイベントの懇親会が別会場で三つくらいあるという感じで(笑)。
これだけ新潟という街でスタートアップ的なイベントがいくつもある状態は、自分が移住する前の新潟にはなかった光景だなあと思いました。
その時に思ったのが「これはみんなで一緒にやらないともったいないな」ということでした。それぞれ別の会場でやっていたことを、お互いの会場にいた人がそれぞれ聞きたかっただろうなと。
そこでスラッシュでの体験が重なりました。「新潟イノベーションウィーク」のような形式でみんな“がっちゃんこ”した方がいいなと。まさにスラッシュの新潟版ですね。
自分の仕事は終わったなと思っていた部分もあったのですが、新潟が世界で一番面白い場所になる片鱗を年末に見ました。新潟のスタートアップエコシステムはフェーズ2に入ったなと。
そういう意味で、今年は革命を起こそうかなと思います。もう気にせずに色々やろうと思います。暴れてやろうかなと(笑)。新しい一年が始まるので、また新しい自分を始めたいと思います。この街が一番面白い場所になるのではないかという強い思いを持っています。
ーー最後に言い残したことがあればお願いします。
渋谷:フラーという会社が成長していく上で外部の力を借りなければいけない場面は必ずあるわけですし、外から盛り上がっていくことでフラーが成長していくという場面も往々にしてあると思っています。
そういう意味で僕はフラーの成長のために外を動かすというのは本当に必要だと思っているし、そこがまさにフラーのために自分にしかできない仕事だなと思っています。自分としてもその方がやりやすくていいなと(笑)。
山﨑:その最たる例が2社との資本業務提携だと思います。渋谷がフラーの外から見つけてくれて、熱量の高い状態で僕にパスを回してくれました。今のフラーが成長していくにあたって一番良い形だと確信しています。2025年も内にも外にもいろいろな広がりを生み出せたらと思います。