新たな創り手となるあなたへ。内定証書デザインに込めたフラーデザイナーの思い
「内定証書を受け取った瞬間に、みなさんはサービスのユーザーから創り手に立場が変わります。そんなこれから起こる環境の変化をスマホの視点からユーザーの手を見るような表現でデザインさせてもらいました」
2023年10月に催されたフラーの内定式でそう伝えたのは、この年の内定証書デザインを任されたデザイナーの佐藤さんです。
新卒社員の受け入れが本格化した昨年から、フラーでは内定証書と入社証書のデザインを社内公募のコンペで決めています。審査を行うのはデザイナーとして自らも手を動かし続けている社長と副社長。年次も社歴も関係なく、2人が本当にいいと感じたデザインが選ばれるシビアなコンペです。
今回の記事では今回のコンペを勝ち抜き24卒向けの内定証書をデザインした佐藤さんに、デザインに込めた思いやその表現方法など、振り返ってもらいました。
ここからは佐藤さんにバトンタッチして、内定証書のデザインについて話をしてもらいます。
意味をつなげて体験を設計
僕がデザインした内定証書のデザインコンセプトは“創り手になる覚悟”です。本来ならこのコンセプトから決める方が正しいのかもしれませんが、実はコンセプトの言葉はグラフィックを考えている中で生まれました。
グラフィックのアイデアのきっかけになったのは、アーティスト志茂浩和さんの映像作品『弁天様』です。
この作品を見たときに感じたのは、「スマホの中から見たユーザーの姿みたいだな」ということ。このときの“スマホから見たユーザー”という観点をスマホアプリを手掛けるフラーのデザイナーとしてどこかで活かせたらと思っていました。
内定証書コンペの要件は“これからフラーで働くことが楽しみになるようなデザイン”と自由度が高かったので他のアイデアもいくつか検討していたのですが、フラーの内定証書として意味が繋がりやすいもの、コンセプトとして立てやすいもの、内定式の体験設計などを考えて“スマホから見たユーザー”を膨らませてデザインしていくことにしました。
こちらはコンペに提出した提案ラフデザインです。
受け取った瞬間や集合写真を撮る体験設計のベースになったのは、僕自身が内定者として参加した昨年の内定式。内定証書を授与されるときのことや集合写真を撮るときの内定者の気持ちを思い出しながら提案資料に盛り込みました。
ブラッシュアップで見つけたグラフィックの意味
コンペで選んでもらえたときは、とてもうれしかったです。でも同時に「紙で作れるかな」と不安も少しあったので、CDO櫻井さんのレビューを受けながらブラッシュアップを重ねました。
コンセプトや方向性については評価いただいた一方で手のリアルさが気になるとのレビューを受け、それをどう解決するかをまず考えていきました。
手はガラスフィルム越しにライティングなどをせずに撮ったものです。撮影し直す案もあったのですが、手の形は変えたくなかったのでグラデーションを強めに入れることで手の生々しさを薄めていくことにしました。
コンペ提案時にはアプリアイコンをタップする手として制作していましたが、グラデーションを強めるなら別に意味を持たせたくて、ここでもいくつかパターンを作りました。最終的に決めたのがPull-to-Refresh(スマホの画面を下に引いて更新する動作)の表現です。新しいデータを読み込むことと新しく入社する内定者を迎えることがリンクした意味に取れると考え、これで進めることにしました。
色にも意味があり、コーポレートカラーである青色が今のフラー、赤が新しく入社する内定者と考えていました。今のフラーの人数のバランスとしても既存社員が多いので、青の面積は大きくしています。下に向かうに連れてグラデーションの青を濃くすることで、テキストの視認性も高まるようにしました。
一方で内定者を表す色の面積は少なくなるので強めにしたかったのと、内定証書を持ったときの感じや記念撮影時の色の映え方や印象の強さを考えて、パキッとした赤を使うことを決めました。
画面上のグラフィックから実物の証書へ
全体的なグラフィックが決まった後、いよいよ紙に印刷していく段階へ進みます。印刷にまつわる知見が僕にはなかったので苦労した部分でもあります。
印刷会社で印刷をすることにしたので、最初は店舗に備え付けの紙で試し刷りをしました。ですが実際に持ってみたときの質感や印刷に満足できなくて、別途注文した紙を持ち込むことに。
用紙を決めるときに意識したのは、初めて内定証書に触れる瞬間の内定者の気持ちです。希望に胸を膨らませながら社長から手渡しされる内定証書なので、光沢があってキラキラする用紙を使いたいと考えていました。2回目の試し刷りで何種類かの紙を試した結果、使うことにしたのはペルーラという用紙です。
3回目の試し刷りでは主に色の調整を見ました。グラデーションの中間地点や白と赤の一番真ん中をどこに置くか、青の高さをどこまで盛り上げていくかなどのグラデーションの細かい調整を繰り返します。
3回の試し刷りを経た後で、最後に本刷りをして完成に至りました。
内定式のアイテムにもデザインを
内定式で使うネームプレート、名札、式の中で投影するスライドといった制作物も内定証書のグラフィックに合わせてデザインすることになりました。
ネームプレートと名札は直前に作ることになったので、会社で印刷できる紙に合わせてデザインを決めました。赤と青のグラデーションがきれいに印刷できなかったのもあり、赤を出さずに青の一部分、内定証書のメイングラフィックの中からちょっとだけ要素を見せるイメージで作ることにしました。
内定式で使うスライドを作る中で「デザインに込めたメッセージを伝えてほしい」と言ってもらったので、内定式当日は内定者に向けてデザインの紹介もしました。
コンペの時点からすべてのグラフィックに意味を付けてデザインしていたので、その要素を内定者のみなさんに向けた言葉に整理して伝えた形です。
内定者が内定証書を掲げて記念撮影をしているところを見たときはその景色がきれいで本当にうれしかったのと、達成感といっしょに「やればできるんだな」と自信も持てました。
グラフィックは得意ではなかったけれど
実はこれまで、グラフィックには苦手意識を強く持っていました。大学の授業で取り組んだときに全然評価されず、グラフィックは感性によるものというイメージがあったからです。反対に自分はプロダクトデザインなどのすべてに意味をつけて創っていくものが好きだし得意だと思っていました。
しかし今回の内定証書の制作を通して、グラフィックの食わず嫌いだったところが解消された気がします。グラフィックの色や構成、モチーフ、文字の部分などに全部に意味合いを持たせてたら思った以上にカチッとはまったこと、内定証書を受け取る瞬間と集合写真を撮る瞬間など体験を通してどう感じてもらいたいかの判断基準でグラフィックに向き合えたことで、前よりはグラフィックもやれるかもと思えるようになりました。
レビューくださった先輩デザイナーや協力してくれた同期のみなさんはもちろん、昨年の内定証書をデザインした久保さんにも感謝を伝えたいです。今回の制作にあたり印刷の仕方や発注方法をはじめ、たくさん相談させてもらいました。本当にありがとうございました。
これまでの内定証書や入社証書から僕が受け継いだバトンが、次に繋がったらうれしいです。
おわりに
佐藤さんありがとうございました!
佐藤さんが考え抜いたデザインに込めた思いは内定者にもしっかり届いていました。以下は内定式後に内定者にお願いしたアンケートの回答の一部です。
デジタルパートナー事業に取り組むフラーのデザイナーは“幅広く一貫してデザインをしていく統合的なデザイナー”を理想としています。主軸はデジタルプロダクトのものづくりだからこそ、UI/UXデザインや動画、ポスター制作など、デジタルに限定せずにパートナーの成功に向けて一貫してデザインに関わっていきます。
フラーのデザインを含めたものづくりの姿勢については、今後もこのnoteで伝えていきます。
過去に公開したフラーのデザインプロセスについての記事も合わせてご覧ください。
内定式当日の様子についてはこちらの記事でお伝えしています。