手を動かし続けるデザイナーであれ。マネジメントと向き合うデザイナーのキャリアを考える
去る2023年9月30日と10月1日、フラーはDesignship 2023に参加しました。
「広がりすぎたデザインを接続する」をコンセプトに開催されたDesignship 2023では、フラーのデザイン組織を統括するCDO櫻井が「手を動かし続けるデザイナーであれ」をテーマに登壇しました。
今回のフラーのデジタルノートでは、そのときの登壇内容をパワーアップさせた内容を掲載します。デザイナーのキャリアの現状やフラーデザインが大事にしていることを伝えています。ぜひ読んでいただけたらうれしいです。
それでは、ここからの書き手はCDO兼デザイングループ長の櫻井です。
フラーでCDOをしている櫻井(@sacurai)です。
今日は「手を動かし続けるデザイナーであれ」と題して筆を手に取っています。
現在、フラーの社員数は150名ほど。そのうちデザイナーは30人で、中でも4名がデザインマネージャーを担っています。この規模でもマネージャーもデザイナーとして手を動かすことがすごく大切だと強く感じています。
どうして手を動かすことが大切なのか、今日は改めて言語化してまとめていきます。
広がり続けるデザイナーの領域
本題に入る前に、現在デジタル領域のデザインが置かれている状況についてまず一度整理をしていきます。
以前の記事で詳しく書いたのですが、2023年の現在も“デザイン”という言葉は様々な領域を超え、その中のデジタル領域においても広がり、細分化され、大きく変容しています。
デジタルの領域のデザインの歴史を遡ると、1985年にMacintoshが発売され、1990年代にWebデザインの分野が発達していき、2007年にはiPhoneが発売されました。つまりデジタル領域の中でもフラーが主軸としているスマートフォンアプリの分野は、誕生からまだ20年も経っていません。建築業界などの長い歴史がある領域と比べるとより実感するのですが、デジタル領域のデザインはまだまだ始まったばかりです。
例えば、20年前に新卒でアプリ領域のデザイナーとして入社した人がいるなら、その人はおそらく現在40歳前後。僕も同じような世代で、自分自身のデザインスキルだけではなく自分はもちろん後輩のデザイナーのキャリア、さらにはそのための自分の身の振り方について今まさに考えなければいけないと感じている人も増えているのではないでしょうか。
デザイナー人口の増加や流れた年月の長さに比例するように、デザイナーのキャリアも様々な形が生まれています。
リードデザイナー、プロダクトマネージャー、デザインストラテジスト、プロジェクトマネージャー、アートディレクター、デザインマネージャー……その役割や呼び名は業態や組織、国によっても様々。まさに広がり続けているのが2023年の現在です。
デザイナーのキャリアを積み重ねると起こること
デジタル領域のデザイナーの役割が広がっていると感じると同時に、よく耳にしたり感じたりすることがあります。それは「デザイナーのキャリアを進めていくと、手を動かす時間が少なくなる」という事象です。
手を動かすとは、UIUXデザインやグラフィックデザイン、DTPデザインなど、デザインするために頭を動かし、実際に自分で手を動かしてデザインすることを指しています。
しかし、デザイナーとして経験を重ねていくとマネジメント業務が増え、ピープルマネジメントやリソース管理、デザインレビューなど手を動かしてデザインする以外の時間がどんどんと増えていくことがよく起こっていると聞きます。
デザイナーのキャリアを進んだ先のマネジメントの業務は多岐に渡ります。目標管理、業務進捗管理、デザインレビュー、日頃の悩み相談を受けるなどのピープルマネジメント、連絡や調整業務……所属する組織や環境によって種類は様々ですが、主にこのような業務を担うことが増えるのではないでしょうか。デザインとは頭の使い方も分野も違う上に、サービスローンチやリリースのような区切りが付けにくい業務も多いです。
手を動かさないから、身につく新しい観点もある
ここで僕が伝えたいことは、手を動かす以外の時間が増えることが悪だ、なんてことではありません。
僕はむしろ、手を動かす以外の時間によって得られる新しい観点やスキルはたくさんあり、いいところも多くあると感じています。
例えばデザインレビューでは、自分は手を動かしていない一方でレビューを通して擬似的にデザインする立場を体験できます。
僕もフラーとして銚子丸の縁アプリ開発に携わる中で、店舗、注文時のタブレット、お寿司のことなど、飲食店に関わるあらゆるデザインについて初めて学ぶことがたくさんありました。デザインレビューは僕が一方的に伝える場面ではまったくなく、逆に担当しているデザイナーから学ぶことがとてもたくさんあります。それは必ず自分がデザインするときに活きてくる経験となります。
それだけではなく、デザインレビューでは言語化能力も培われます。レビューを「なんかイケてないよね」などの言葉で済ませてしまうと、レビューを受ける人もどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。レビューするデザインの論点を明確にするため(ユーザビリティについてなのか見た目の美しさについてなのかなど)や相手が腹落ちしやすい言葉を選ぶためにも言語化する力は必要です。デザインレビューに向き合う中で磨かれるスキルのひとつだと感じています。
他にもプロダクト管理では、デザインだけではなくもっと大枠のビジネス視点が必要になります。例えばそれまではユーザー目線でしっかりとものづくりをすることを目標にしていたデザイナーが、新たにプロダクト全体のゴールを意識し、プロダクトを続けるために必要な売上やスケジュールなどにまで考えを巡らせられるようになる、ということです。
これによってデザインだけではなくビジネスや技術的な視点についても深められるようになっていきます。これらの視点で理解した内容をデザインに活かせるようになることは、デザイナーとして大きな強みになります。
もうひとつ例に出したいのは、リソース調整です。特にフラーのようなクライアントワークにおけるビジネスの場合は、業務において時間や費用の話は切っても切り離せません。これはビジネス視点にもつながるところで、時間や費用、コストの感覚があると自分が割くべき時間が何かを考慮しながらデザインをすることもできますし、どれくらいのスピード感でどれほどのクオリティまで高めるといいのかなどの算段がつくようにもなります。
すべてに全力を出したい気持ちがある一方で、時間やリソースは有限です。大事なところで全力を出すためにも、配分を考えながら手を動かすことや効率を考慮することはデザイナーを続けていく上での大事なスキルとなります。
というように、新しい観点を持ったデザイナーがみんな手を動かすことができたら、さらにデザイナーとしての経験が深まると僕は思っています。
一方で、新しい観点を持った先ではデザイナーとして手を動かす時間をとりづらい実態もあります。
プロフェッショナルかマネジメントかの選択を迫られてしまう、管理者にどんどんと管理の業務が集まってしまうなどの現状などがあって、新しい観点を得ながら手を動かせるデザイナーは増えにくい、というのが現在のデザイナーに起こっていることなんだと見ています。
僕はこの現状はもったいないことだと感じています。できることなら新しい観点を持ったデザイナーが増えていく仕組みを作りたい、そんなデザイナーが増えたらいいと個人的には思っています。
フラーではどうしているのか
僕自身、10年以上現場でデザインをしながらマネジメントや経営に偶然にも多く関わってきました。その経験からも、デザイン以外の業務に携わったことでデザインに深みや広がりが加わり、総合的にデザインの力も高まったと手を動かし続けたからこそ感じています。
こちらは僕がマネジメントや経営に携わりながらデザインしたものです。このようにロゴやパッケージのデザインから日々の資料作成まで、今でも手を動かし続けています。時間が限られている中だからこそ、優先度を付けながら考えるなどの動きができるようになりました。
このような経験もあって、フラーではデザインマネージャーにも現場に触れて手を動かす時間や余白を設けることを大切にしています。
正直に伝えると、フラーのデザインマネージャーもマネジメント業務の量が少ないわけではありません。すべての時間を手を動かすために充てられない現実はありますが、手を動かすことの大切さを理解して、その時間を確保するように努めていますし、努めていくべきだと僕は思っています。
僕はデジタル領域が素敵なものがたくさん溢れるような世界だったらいいと思っています。そのためにキャリアを通して築かれる新しい観点を得ながら、手も動かしていけるデザイナーがもっと増えてほしいという気持ちです。
以上、デザイナーのキャリアについて話をさせていただきました。ぜひ今回の内容がデザイナーのキャリアそのものについて考えるきっかけになればうれしく思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
お知らせ
櫻井さん、ありがとうございました!
(ちなみに今回のnoteのサムネイル画像や記事中の画像はすべて櫻井さんが手を動かしてデザインしたものです!)
フラーデザインについてのデジタルノートはまだまだありますので、ぜひフラーのデザイナーをまとめたマガジンも合わせてご覧ください。
また、フラーではデザイナーをはじめ一緒に働くメンバーを積極採用中です。
フラーやフラーデザインにご興味お持ちいただけましたら、お気軽にご連絡ください。
採用ピッチ資料はこちら↓