マイクロソフトの生成AIアシスタント「Microsoft Copilot」をビジネスシーンで活かすには? App Ape Award 2023 ネクストスタンダード賞アプリインタビュー
フラーが手がけるアプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」のデータをもとにユーザーに愛されたアプリを選ぶ「App Ape Award 2023」で、「Bing:AI&GPT-4とチャット」が「ネクストスタンダード賞」に選定されました。
生成AIアシスタント「Microsoft Copilot」を機能として組み込んだ「Bing:AI&GPT-4とチャット」のアプリとしての魅力やCopilotのビジネスでの生かし方について、マイクロソフトディベロップメント株式会社WWE Japan 開発統括本部プロダクトマネージャーの篠塚祐紀子氏に伺いました。
(敬称略、記事・石徹白未亜、編集/写真・日影耕造)
ネクストスタンダード賞選定理由について
「Bing:AI&GPT-4とチャット」は、2023年を代表する技術革新といえる生成AIを取り込み、同様のアプリの中で最もアクティブユーザー数を伸ばしていることから、新たなトレンドの普及に最も貢献したアプリであると考え、「ネクストスタンダード賞」に選定しました。(ユーザー数などはアプリ市場分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」推計)
日常的に使っていく存在にさらにステップアップへ
――ネクストスタンダード賞の感想についてお聞かせください。
篠塚:とても光栄な賞をいただきありがとうございます。生成AIという時代の流れの中で、Copilotの認知はまだまだ発展途上で、「どうやって使うのかな?」と試すような形で使っていただいている中かと思います。今後は日常的に使っていく存在にさらにステップアップしていければと考えており、そういった意味でも「ネクストスタンダード賞」をいただけたのかもしれないなと感じています。
Copilotを使いこなす①周辺情報から検索
――Copilotはどのようなことに活用できますか?
篠塚: CopilotはBingのエンジンを使った生成AIアシスタントです。GPT-4、GPT-4Turboと呼ばれている言語モデルを使っています。
このCopilotにBingの検索由来のデータやアルゴリズムを掛け合わせることで最新かつより信頼度の高いデータを出力できるのがCopilotの強みです。
本当にさまざまな使い方ができます。例えば、従来の検索では、キーワードによる検索結果から自分でリンクをたどって情報を調べたり探したりしていましたが、Copilotは対話を通じて情報を要約した結果に簡単にたどり着くことができます。
キーワードベースの検索では、具体的に検索したい言葉・ワードが分からないとそもそも情報にたどり着けなかったのですが、Copilotは周辺情報で情報が得られるようになりました。
例えば「トゲトゲとした見た目で、果肉には黒いつぶつぶとした種があって、南国のフルーツの、あれはなんて名前だっけ?」というフワッとした検索でも、Copilotであれば「ドラゴンフルーツですか?」といった具合に必要な情報にたどり着くことができます。直接の言葉がわからなくても、会話形式で手軽に検索できるようになったのも大きなところですね。
Copilotを通じて表示された情報が本当に正しいものなのかさらに深掘りしたい時も、元のソースを辿ってさらに詳しく知ることができます。情報の信頼性を担保するのに重要な機能です。
私自身、例えば渋谷に行ったときに「この辺りでご飯が食べられるお店はどこ?」といった具合に、会話するような気軽な使い方をしています。Copilotに慣れると手放せなくなります。
Copilotを使いこなす②要約・翻訳・言い換えもお任せ
篠塚:大規模言語モデルをベースとしているCopilotは、翻訳や要約も得意です。例えば「この英語をもうちょっとリッチな言い方にしたい」といった使い方もできます。
これまでの機械翻訳は本当に機械的で人間らしくない表現になりがちでしたが、Copilotはより自然な形に翻訳・要約したり、わかりやすい表現にブラッシュアップしたりすることが得意です。
実は、日本のお客様は英語をはじめとした語学学習系でCopilotを特によく使われています。
また、「敬語をどうしよう」とか「もうちょっといい表現がないか」といった日本語の表現を模索する使われ方もしています。Copilotを生かして何か勉強したい、学びたい、という気持ちが日本のお客様は強いように思います。
Copilotを使いこなす③データを読み解くマルチモーダルサーチ
篠塚:Copilotを使えば創造的なワークも可能です。
プレゼンテーションやレポート作成の補助のほか、画像や図表・データなどの非テキストデータを読み解く「マルチモーダルサーチ」もできます。例えばExcelをCopilotに読ませ、「このグラフから何がわかりますか?」とすごくざっくりした問いを投げかけても分析してくれるんですね。
今まで人の目で見て何がわかるか考えないといけないところでしたが、そこをCopilotが助けてくれます。
もちろん、細かいところで読み違いが生じることもありますので人間が確認することは必須ですが、自分の仮説と比較して抜け漏れがないか確認したりアイデアを発展させたりするための補助として使っていただけます。
Copilotを使いこなす④「なんとなく」から作れるビジュアル
篠塚:ビジュアル作成もCopilotで可能です。「こんなイメージやデザインが欲しい」と漠然と頭に思い浮かんだものを言葉で伝えるのって、かなり難しいですよね。ですがCopilotのデザイナー機能を使えば「〇〇な感じ」的な、ふわっとした言葉でもイメージを出力してくれます。
思い通りのビジュアルにするポイントは「ちょっとずつ整えること」です。出力されたものが違うなと感じたら、質問を重ねて修正していく形です。「ここはクエスチョンマークじゃなくて、電球がぱっと光ったみたいにしてほしい」とか、そういうのを続けて会話するとより想像していたイメージに近づいていくと思います。
「自分の中で不明確(アンクリア)なものを明確にするのを手伝ってくれる」という使い方もできるのです。
さまざまな使い方が広がりますが、Copilotはその名の通りあくまでアシスタントです。Copilotを使ったとしても最終的にブラッシュアップしていくのは人間なのです。
Copilotに100パーセント頼らずに効率や生産性を上げるために生かすのが最適な使い方かと思います。
――アプリでCopilotを使う際の魅力はどこにありますか。
篠塚:アプリのいいところは、なんといってもどこでも使えるところです。お手軽に、ちょっと調べたいというとき、電車の中とか外出先でPCを出すには不自由なときなどでも、アプリであればすぐに開けます。
気軽にお使いいただける、すぐ自分の手元にある「アシスタント」として、アプリを通じてCopilotを手軽に使う方が増えていったら嬉しいです。
困りごとを解決する“魔法の杖”を見つけたい
――愛されるアプリになるために必要なことは何でしょうか。
篠塚:使っていただくことでお客様に「困りごとが解決できた!」といった体験をたくさん提供することが、製品として発展し、長期に渡り使っていただける製品になるために必要なことだと思います。
そんな「困りごとを解決する魔法の杖」が何なのかを考えることは、開発として、そしてプロダクトネージャーとして大切にしていることです。
――お客様の困りごとはどのようにして集めていますか。
篠塚:様々なチェックポイントでお客様の声を常に拾えるようにしています。
ユーザーフィードバックやフォーラムを日々見ていますし、SNSの感想も確認しています。プロダクトを始める前にユーザースタディーをするのも大切にしてますし、場合によってはサーベイも実施します。実際にプロダクトが世に出た後の機能などの利用状況ももちろんチェックします。
また、Copilotを通じて取材や講演などの機会をいただくことが増えましたので、その中で直接お客様のお声を頂戴することもあります。これはとてもありがたいですね。
――今後Copilotの更なる発展のためにどのような活動をしていかれますか?
篠塚:日本は日本語という言語的にもカルチャー的にもユニークです。日本特有の使い方や、他国との違いを捉えて製品に反映できるよう、日本の開発チームとしてしっかり取り組みたいです。
そのためにはお客様のお声が本当に大切です。「こういう風にもっと使いたい」などのお声がありましたらぜひお寄せいただければ幸いです。今後もお客様と一緒に、Copilotをより良くしていければと強く思います。