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業務運営のデジタル化で持続可能な運営へ。 担当ディレクターが考えるDX

フラーが2017年から長岡花火財団とともに企画・開発を手掛けている「長岡花火公式アプリ」が、2023年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。フラーとしてグッドデザイン賞を受賞するのは初めてです。

東京・六本木の東京ミッドタウンで10月25日〜29日に開催されたグッドデザイン賞の受賞展では、長岡花火公式アプリを紹介する展示コーナーを設置。デザインに関心がある多くの来場者にアプリの紹介を通じて長岡花火の魅力を発信しました。

実は、長岡花火でフラーが関わっているのはアプリだけではありません。

アプリの開発・運営の裏側で、長岡花火が継続して発展していくため、デジタルを使って何ができるかを考え、実行していく大会自体の業務効率化にも並行して取り組んでいます。

2023年はアプリの機能開発に加えて、花火運営スタッフが使うプロダクトの企画、開発を行いました。

なかなか表には見えない部分ですが、大会運営を支える重要な要素であるデジタルを生かした業務効率化。そこに込めた思いや取り組み状況について紹介します。(記事・宮﨑朋美、編集・日影耕造)

宮﨑朋美
プロフィール:大阪府出身。大阪大学卒業後、官公庁入庁。その後、新潟に移住し、大手新聞社、通信社勤務を経て2018年10月フラーに入社。
ユメはフラーのプロダクトを通じて、ローカルを豊かにすること。
長岡花火公式アプリのディレクションを担当するほか、現在はデジタルパートナーグループのマネージャーとして社内のプロダクトとプロジェクトの品質向上のルール作りにも取り組んでいる。

大きく変わった長岡花火を取り巻く環境

(新型コロナウイルスの5類移行後初の2023年の長岡花火を見るフラーのメンバー)

デジタルを生かした長岡花火の業務効率化の歴史は、取り組みを始めた2017年にまで遡ります。

長岡花火の中長期の成長を図るため、長岡花火財団とフラーは取り組み当初の2017年からアプリを中心とした長岡花火のデジタル施策の中期ビジョンを3カ年計画として取りまとめ、3年に1回の頻度で更新しています。フラーはプロダクトを作るだけでなく、事業そのものの最善をクライアントとともに創り上げていくこともあります。

2022年は次期3カ年計画(2023年〜2025年)のマイルストーンをフラーが提案しました。

前回(2018年)の3カ年計画(対象期間は2018年〜20年)を策定した当時はCOVID-19の流行前で、海外からの観光客が増え続けていた時期だったことから、計画内容も主にインバウンド観光客へのPRや現場対応がメインでした。

しかし、2020年、COVID-19の流行により長岡花火も2020年から2年連続で大会中止に。当初の3カ年計画の大前提が崩れた形となりました。

具体的には、長岡花火財団の主な財源である観覧席料が無くなり、長岡花火の歴史や物語を伝える広報活動など大花火大会運営以外の業務にも影響が出るようになりました。

さらに長岡花火財団だけではなく、花火打ち上げに関わる花火師をはじめとした花火関連業者への打撃は計り知れず、このまま大会中止が継続すると、大会が復活した頃に肝心の花火を支える技術者がいなくなってしまうのではないかという課題に直面しました。

3年ぶりに開催されることになった2022年の長岡花火は、COVID-19前に比べて、感染防止対策や混雑対策など、以前に増して運営への負担が大きくなった年でもありました。

一度変わった人の行動変容や「安全」に対する基準は容易には変わりません。運営への負担が以前の基準に戻ることは難しい状況と考えられます。

このような背景で、我々が3カ年のデジタル中期計画のコンセプトとして掲げたのが「未来を見据えた持続可能な花火大会運営へ」です。

(長岡花火公式アプリに関する提案資料を一部加工し抜粋)

そのコンセプトを支えるアクションプラン3つの柱の一つに、運営スタッフの業務効率化を掲げました。安全な花火大会の開催に年々人的リソースがより必要になっていく中、日本の花火大会のリーダー的存在として、継続的に成長していくために業務効率化を推進していくとしました。

電話と紙で集計していた混雑の把握をウェブとアプリに置き換え

アクションプランの一つである業務効率化のため、2023年度はスタッフが利用する駐車場管理画面を開発しました。

駐車場管理画面は、当日の駐車場の混雑状況の数値をスタッフが入力するものです。

長岡花火大会では、事務局が管理している駐車場の当日の混雑状況(空・混・満)を公式ウェブサイトやアプリのマップ画面で公表しています。

これまでは、現地の警備スタッフが、各地点の駐車場が目視で何%埋まったかを確認し、大会本部に電話などで連絡。大会本部の担当者は、集めた情報を大きな紙に書いて貼り出した上でエクセルにまとめて公式ウェブとアプリの担当者にメールで送付し、受け取った各々の担当者がそれぞれシステムを更新して情報を反映していました。

この方法だと、別々のスタッフが伝言リレーのように混雑情報の受け渡しをするため、一定のタイムラグが生じます。また、公式ウェブサイトやアプリの情報更新をそれぞれの担当が別々に行うことになるため、デジタル上の全く同じ更新作業を複数人が手分けをして行うという無駄が発生することになります。

そこで、「入力した情報がデジタル上でそのまま反映される仕組みがあれば、課題を全て解決出来るのでは?」という発想から今回の駐車場管理画面の企画開発を行いました。

(長岡花火公式アプリに関する提案資料を一部加工し抜粋)

プロダクト自体は非常にシンプルです。

警備スタッフからの情報を受け取った大会本部の担当者が、管理画面に駐車率の数値を入力。情報はクラウド上のデータベースで管理し、公式アプリや公式ウェブサイトと連携し、リアルタイム表示させます。

また入力用の管理画面だけでなく、反映させた情報を運営スタッフ専用のウェブページ上に表示させ、入力したスタッフの確認用だけでなく、複数の拠点で働いている大会運営スタッフに即時情報が伝わる工夫も行いました。

(駐車場の駐車率入力管理画面)

公式ウェブサイトは、別の開発ベンダーが管理しているので、開発ベンダーとの調整も行いました。開発自体はシンプルですが、花火開催日時というデッドラインが決まっている中で、花火大会の準備で忙しい長岡花火財団をはじめ、関係ベンダー社との調整を行いながら進められたことも大きかったと考えています。

イベントの現場というのは今までの蓄積された知見ややり方を大きく変えることで混乱が生じ、逆に非効率になるケースも多々あります。

ですので、今年はソフトランディングさせることを最重要に考え、「大会運営本部」スタッフの作業箇所から着手し、次の目標として警備スタッフが直接入力できるUIの開発と現場調整を目指しています。ゆくゆくは我々フラーも含め、駐車率管理に関わっているスタッフ数のスリム化を図られればと考えています。

長岡花火財団と駐車場管理画面の振り返りを行う

当日入力担当したスタッフから感想を聞き取ったところ、駐車場率の入力自体は非常に簡単でトラブルは無かったとのことでした。ルールを変えた時は混乱が伴うことが多々ありますので、ひとまずホッとしたのが正直な感想です。

ただ、駐車場のデータを即時反映してデータ可視化したことで、今まで行ってきた現場の運用ルールで見直したい箇所が出てきました。

例えば、駐車場の「満車」のお知らせ。アプリのマップ上での「満車」は、完全な満車の直前で表示していました。一方、アプリのプッシュ通知は完全に満車となった後で配信・表示していました。

観覧客からの問い合わせを受けるスタッフが、即時反映したデータを確認できるようになったからこそ気づいた運用上のルールの差です。現場での混乱を少なくするためルールを統一するなど、改善のための議論に繋がりました。

そのほかにも、閲覧用ウェブをパソコンで閲覧するスタッフと、スマートフォンで閲覧するスタッフは利用するシーンや参照するコンテンツが異なっているなど、現場のフィードバックは学びの多いものでした。

(長岡花火財団と当日の管理画面の利用について振り返る)

警備スタッフが使うところまでを想定していますので、駐車場現場で働く警備スタッフの業務を理解することが、次に私がやるべきことです。

DXとはなんだろう

DXとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」 (出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」 )と定義されています。

単なる業務効率化に留まらず、常に業務運営のアップデートを行うことで浮いたリソースを、素晴らしい長岡花火大会運営のために使う、ユーザーの声に耳を傾け、花火大会そのものを取り巻く社会情勢などにも積極的に解決策を提示し続ける、そして唯一無二の「長岡花火」ブランドを守り続けていくーー。

この一連の行動が、長岡花火に関わるスタッフ全員のDXだと考えています。

その進化し続ける長岡花火財団のDXのために、我々フラーの開発メンバーが関われることは、この上ない喜びとなっています。これからもデジタルパートナーとして伴走して行きたいと考えています。

次の目標は、外注している警備スタッフに直接データを入力してもらうUI作成と、そのため関係者の認識を揃えることと警備スタッフの仕事の内容を理解すること。

繰り返しになりますが、一連の取り組みはデジタル化そのものが目的ではありません。

より良い長岡花火運営にリソースを充てるため、デジタルを生かして業務のやり方をアップデートし続けることが重要だと考えています。

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