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花火大会イベントならではの、デザインと開発の向き合い方

この度、長岡花火財団とともに企画・開発を手掛けている「長岡花火公式アプリ」が、2023年度グッドデザイン賞を受賞しました。

アプリを手がけるフラーのデザイナーが、花火大会イベントならではの機能や、フラーのデザインや開発への向き合い方について綴りました。

一野瀬 麻里奈
プロフィール:新潟県長岡市出身。長岡造形大学卒業後、印刷会社にグラフィックデザイナーとして勤務。2018年にフラー入社し、UI/UXデザイナーとして様々なプロジェクトへ参加。「長岡花火公式アプリ」ではリードデザイナーとして参画。

長岡花火公式アプリが作られた背景

「長岡まつり大花火大会」とは、新潟県長岡市で毎年8月2日、3日に開かれる花火大会です。

日本三大花火の一つである華やかなイベントですが、起源は長岡空襲で亡くなられた方々への慰霊と、長岡の復興を願う特別な花火大会です。毎年100万人以上の人が来場し、感動を与え続けています。

そんな長岡を代表する伝統的で大規模なイベントですが、運営はアナログで設計されているものが多く、アナログならではの課題を抱えていました。

例えば、会場内のトイレなどの施設は紙のパンフレットに記載されており、大会中の暗い会場では見にくかったり、当日の駐車場の混雑状況は現地に行ってみないと分からなかったりといった不便さがありました。

不便さを感じるのはユーザーだけではありません。
運営側も、来場者へ最新情報を伝えられなかったり、アンケートなどのフィードバックを得られなかったりと双方の課題が山積みでした。

そこで、花火鑑賞に必要な情報や機能をスムーズに届けることを目的に、花火大会当日を最大限楽しんでいただくことができるよう「長岡花火公式アプリ」を長岡花火財団とフラーが共同で開発・リリースしました。

たった4時間を最高にするために

花火大会開催時間は1日2時間、8月2日と3日で合わせても1年のうちたった4時間しかありません。時間としては短いですが、この瞬間がより素敵な思い出になるための機能を詰め込んでいます。

今回のグッドデザイン賞に応募した際に特長として挙げた4点を軸に、アプリが長岡花火をどう変えたのか、そしてデザインにおいてどのようなことを考え、実際の形にしていったのか、その一部をご紹介します。

1.アナログの不便さをデジタルで解決

アプリが作られた背景でも挙げましたが、今までの運営には「アナログならではの課題」がありました。

会場のマップやプログラムは紙のパンフレットに記載されているので、大会中の暗い会場では見にくいという不便さがありました。

そこでプログラムをアプリに持ってきたことで、夜でも快適に閲覧することが可能になりました。

会場のマップに加え、事務局が管理する「駐車場マップ」も閲覧できます。これは場所の確認だけではなく、駐車場の混雑状況が分かるマップとなっています。

駐車する時、これまでは空きがあるかどうかは現地に行ってみないと分からず、満車だった場合は「行ってガッカリする」という体験が生まれてしまっていました。

花火大会は花火の打ち上げ前から体験が始まっています。駐車場の混雑を把握できれば、花火大会全体の体験向上につながるはずです。

そこで、駐車場の埋まり状態を3段階に分けてピンで表し、事前に混雑状況を知れる仕組みにしました。

この機能は運営スタッフの業務効率化まで考え、デジタルの力を生かした機能となっているので、開発の裏側もぜひ読んでみてください。

2.花火大会に特化したUIデザイン

長岡花火公式アプリはユーザーが使用する環境も考慮してデザインしました。

花火大会はもちろん夜に行われるので、周囲が暗い状態でも見やすいよう、黒を基調としたカラーを採用しています。

見ている本人の目の負担軽減だけではなく、花火打ち上げ中にアプリを開いても、周囲の人がスマホの光が気にならないよう配慮しています。

作業中UIに迷った時は、使ってない会議室であえて電気をつけないで、暗い環境を再現してプロトタイプを確認した時もありました(笑)

さらに、「プログラム」機能にはリアルタイム性も持たせています。
ただ演目の予定を確認できるだけではなく、「今打ち上げられている花火が分かる」プログラムとなっています。

大会が始まると「打ち上げ中」のUIが表示されるのですが、これは実際の打ち上げ時間と連動しています。

また、花火会場では通信環境が良くない場所もあるため、プログラム機能はオフラインでも使えるように設計しています。

3.今までにはない来場者と運営者の接点を

来場者と運営者の接点を設けられるのも、デジタルならではです。

長岡花火公式アプリの登場以前はリアルタイムの情報を得られる場がありませんでした。アプリでは交通規制や開場情報など来場者が欲しい最新のお知らせを、プッシュ通知でユーザーに届けます。 

大会終了後には、来場者向けにアンケートのご協力を依頼する導線を設けました。
今までは知る機会がなかったユーザーからの声を、アプリや運営の改善に役立てています。

4.一体感ある光で、花火に関わる全ての人々へ感謝を伝える

花火大会の最後には、花火師さんや打ち上げに協力していただいた皆さんへ感謝の気持ちを伝える「光のメッセージ」を行います。

会場のアナウンスに合わせてライトなどの光るものを掲げるのですが、その時に使う「なないろライト」という、スマホ画面がカラフルな色に変化するライト機能を設けました。

これは全ての端末で、同じタイミングで色が変化します。

人々を光で繋ぐことで会場の一体感を演出し、演目が終わった後も会場を感動に包んでいます。

他にも、ウィジェットでカウントダウンを表示できてワクワク感を高めたり、チケット情報を入力することで入場口が瞬時に分かる機能など、便利な機能や楽しめるコンテンツが盛りだくさんです!

ユーザーのために何ができるかを考え抜く

東京・六本木の東京ミッドタウンで10月25日〜29日に開催されたグッドデザイン賞の受賞展では、長岡花火公式アプリを紹介する展示コーナーを設置。デザインに関心がある多くの来場者にアプリの紹介を通じて長岡花火の魅力を発信しました。

今回の受賞にあたり、審査員からは以下のコメントをいただきました。

一日でも、一生忘れられない思い出になる日がある。そのキャッチコピーがにわかに現実味を帯びてくるようなアプリだ。長岡の夏夜を彩る花火の中、色々な思いが紡がれるのだろう。だからこそ交通規制や駐車場の混雑状況を表示するなど、大切な日が台無しにならないよう細かい配慮がなされている。それが大会当日の利用率90%を超えるという快挙にもつながっているのだろう。またアンケート機能も実装されており、フィードバックを迅速に集めることで、よりよくなっていく様子が目に浮かぶ。大型の花火大会への横展開や他イベントへの応用など、今後の広がりにも大いに期待している。

2023年度グッドデザイン賞 長岡花火公式アプリ受賞ページより

素敵な言葉で評価いただき、とても温かい気持ちになりました。

グッドデザイン賞は、課題解決に重点が置かれています。

グッドデザイン賞は、デザインによって私たちの暮らしや社会をよりよくしていくための活動です。1957年の開始以来、シンボルマークの「Gマーク」とともに広く親しまれてきました。製品、建築、ソフトウェア、システム、サービスなど、私たちを取りまくさまざまなものごとに贈られます。かたちのある無しにかかわらず、人が何らかの理想や目的を果たすために築いたものごとをデザインととらえ、その質を評価・顕彰しています。

グッドデザイン賞公式サイト「グッドデザイン賞とは」より

実際、2017年にリリースしてから毎年アップデートを続けてきた長岡花火公式アプリは、ユーザーのために何ができるか、どうしたら花火大会当日を快適に過ごせるのかを長岡花火財団や開発メンバーと共に考え抜いてきました。

その考え抜いた結果を「グッドデザイン賞」という形で評価いただき、大変嬉しかったです。

たくさんのユーザーからの声が励みに

花火大会当日にはSNSでもたくさんのユーザーからの声が集まります。

実際に使っていただいた方に、ちゃんと作り手の意図が伝わっていることが分かり、いつも嬉しい気持ちで見ています。

そんな中でも印象に残ったのは、「なないろライト」と「プッシュ通知」について、ユーザーの皆さんから投稿いただいた内容です。

「なないろライト」は、花火大会の会場で使うことを想定して機能を盛り込みました。

実際、会場でたくさんの方に「なないろライト」を使っていただいている様子を間近で見て感動しましたが、アプリのユーザーの皆さんのSNSの投稿を拝見すると、現地の会場だけでなく、花火大会のテレビ中継を見ながらご自身の部屋で一緒になないろライトを振っていただいた方も…!

アプリをデザインした私たちの意図や会場を飛び越えて、こんなにも楽しんでもらえる機能になったことは、率直に嬉しい驚きでした。

長岡花火アプリの「プッシュ通知」は、大会当日には交通規制から開場情報、駐車場情報、熱中症対策の案内までたくさん送られます。(ユーザー自身で必要な情報の通知設定が行えるものの、全てを受信すると2日間で50通近く!)

一般的に、必要以上のプッシュ通知はユーザーにとってノイズとなり、アプリの体験を損ねかねないものです。長岡花火アプリをデザイン・開発する中でも、ユーザーにストレスなく必要な情報を受け取ってもらうために試行錯誤した部分でした。

しかし、長岡花火の場合、会場の様子を刻々と伝えるプッシュ通知一つ一つに「祭りの臨場感があって良い」とポジティブに捉えていただいている様子がちらほら。イベントのワクワク感がアプリのプッシュ通知によって伝わるという、他のアプリにはない独自の魅力を再発見した気持ちになりました。

さらに、「アプリを作っている人が長岡花火好きなことが伝わる」という内容の、嬉しいコメントも!開発メンバーにとっては一番の褒め言葉です。

「当事者意識」を持ったアプリ開発

代表取締役の渋谷や山﨑をはじめ、フラーには新潟県や長岡にゆかりのメンバーがたくさんいます。
元々渋谷が長岡花火財団にアプリ開発のご提案をしたのも、「長岡に恩返しがしたい」といった気持ちからでした。

私自身も長岡市出身の社員の一人で、長岡花火は幼い頃から毎年見に行く愛着あるイベントだったので、アプリ開発に携われる時点で嬉しかったです。

開発メンバーにも、地元愛強く元々長岡花火ファンが集まっていますし、県外出身のメンバーも長岡花火を観覧して大好きになった人も多くいます。

そうした「本当に長岡花火が好き」なメンバーで、「当事者意識」を持って作ったからこそ、きちんとユーザーからも愛されるアプリになったと思っています。

(現地で長岡花火の鑑賞体験をするフラーメンバー)

長岡花火は毎年社員で観覧し、花火終了後には社員向けにもアンケートを行なっています。

開発メンバーに留まらず、フラー社内には長岡花火好きのメンバーがたくさんいるので、毎年熱い意見が集まってきます。

私は、昔から知っているイベントですし、コアな長岡花火ファンの気持ちも分かるので、むしろ初参加のメンバーの声が特に参考になります。

実際、長岡花火は県外から初めて参加する来場者も多いので、アプリも初めての人にも分かりやすいUIを心がけています。

毎年長岡花火を楽しみにしている人にも、初めて参加する人にも、このアプリで素敵な思い出を作るお手伝いができていたら嬉しいです。

自分たちで実際に会場でアプリを使って体験する以外にも、「当事者意識」を強く持った特徴的な取り組みがあります。それは、「ゴミ拾い」です。

毎年、長岡まつり大花火大会の翌日の早朝に、花火会場周辺の清掃をボランティアを募集しており、フラーメンバーも参加しています。

元々は運営の実態を少しでも知るために始めたことでした。そんな「花火大会そのものを知ろうとする姿勢」は、いつしか一緒にアプリを開発・運営する長岡花火財団の皆様に「ちょっとしたことでも相談したい」と思っていただけるような、安心感や信頼感にもつながっていきましたし、地域とともに長岡花火を盛り上げ、支えるフラーのメンバーにとっても欠かすことのできないイベントとなっていったと感じています。

最後に

長岡花火自体の知名度は全国規模ですが、アプリの認知度はまだまだこれからさらに高めていくことができると思っています。

今回グッドデザイン賞を受賞できたことを励みに今後も改善を続け、「長岡花火観覧には公式アプリが必須」と思っていただけるくらいに、愛されるサービスに成長させていきたいです。

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