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【前編】「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」フラーのミッションができるまで

創業10周年を迎えたフラーはこのほど、新たなミッション「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」を策定しました。

 創業記念日である2021年11月15日には、記念式典を新潟市にある新潟県ITイノベーション拠点施設「NINNO」で開催。この10年でお世話になった関係者らを招きこれまでの感謝を示すとともに、ミッションを含む今後の事業構想について発表しました。

(式典で記念撮影。左から副社長の櫻井、会長の渋谷、社長の山﨑。撮影時のみマスクを外した)

フラーの新たなミッション「人に寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」は、どのようにして生まれたのでしょうか。また、新たなミッションを土台にフラーはどこに向かうのでしょうか。


創業10周年という節目に生まれたフラーのミッションについて、代表取締役会長の渋谷修太、代表取締役社長の山﨑将司、取締役副社長兼CDOの櫻井裕基が率直な思いを語りました。

前編では、ミッション決定までのプロセスやそれぞれの思いに迫ります。(取材・執筆・編集:フラーのデジタルノート編集部・日影耕造、写真撮影:KENTO Broadcasting inc.)

きっかけは「ビジョナリー・カンパニー」

インタビューと撮影はNINNOのオープンスペースで実施した

ーー今回のミッションを作ろうと決めたのはいつごろでしたか?

山﨑:2021年9月ごろでした。渋谷が最初に言い出してくれました。

ーー渋谷さん、どうしてミッションを作ろうと思ったのですか?

渋谷:創業から10年が経過し、メンバーも100人以上に増えて企業として果たすべき役割が大きくなる中で、激変する事業構造や社会に対応した「フラーはなぜ社会の中に存在してるのか」といった視点が必要だなと思い、10周年という一つの大きな区切りを迎えることをきっかけにあらたなミッションを作ろうと決断しました。

山﨑:僕と渋谷が好きな共通の本に「ビジョナリー・カンパニー」があります。

「ビジョナリー・カンパニー」は、会社を長く継続させるために必要なことは何かについて書いてある本です。本では50年、100年と長く継続する会社にするためには、「ビジョン・ミッション・バリュー」が重要であることが何度も記されています。

フラーもこれからずっと長く続く会社にするためには、このビジョン・ミッション・バリューは絶対に必要だなと考えていた矢先に、渋谷から話がありました。

ミッションづくりを楽しそうに振り返る櫻井

櫻井:フラーはこの数年で、データを生かしたアプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」をきっかけにアプリの開発や運用を手がける共創事業が生まれ、デジタル領域全般の支援を展開する「デジタルパートナー事業」に発展していきました。

同時にフラーの体質も変わりました。でも、その変化に見合ったミッションを言語化する部分は無かったのが実際だと思っています。

渋谷からミッションを決めた方がいいんじゃないかって話があった時に、会社をめぐる状況が変化する中で、たしかにこのフェーズであらためてミッションを策定する必要があるなと納得しながら聞いていました。

カルチャーとガバナンスのバランス

ミッションづくりにあたって「時間をかけて作業をした」と語る山﨑

ーーこれまでミッションのようなフラーの大きな方向性を指し示す言葉や方針はどのようにして作ってきたのですか?

山﨑:これまでは渋谷がたたき台を作って、その後に経営陣らで議論して決めるという形が一番多かったですね。

櫻井:直近で策定したのは「世界一、ヒトを惹きつける会社を創る」というフラーの「ユメ」でした。創業5年目にフラーがロゴを刷新したタイミングで、当時は社員数が約30〜40人でした。

グループリーダーなど主要なマネージメント層を全員集め、茨城県つくば市にある宿泊施設「レイクサイドつくば」で合宿をしました。僕がホワイトボードに色々書きながら議論した中からキーワードを抽出し、フラーの「ユメ」が生まれました。

ーー今回のミッション作りのプロセスでこれまでと明らかに異なった部分はどのようなところでしたか?

山﨑:一番の大きな違いは、「取締役会でも議論をして話を進めた」ということです。

スピードが求められる上に組織そのものの構築を進めながら走るスタートアップ・ベンチャー企業ではよくある話だと思うのですが、これまでのフラーの取締役会は「すでに経営陣メンバーで議論して話し合ったものを承認する場」という、どうしても形式的な意味合いが大きいものでした。

今回のミッション策定にあたっては、社外取締役の平出さんや星野さんとも相談しながら、取締役会を「議論する場」にしていきました。

議論を重ねてミッションを策定した

走り続けながら柔軟に形を変え、時にはカオスな状況でさまざまなことを進めてきたフラーが、法人組織としてのガバナンスをいっそう整えた組織になっていく。そんな様子が、今回のミッション作りのプロセスで鮮明になった形です。

一方で、実は今回のミッションを決める際、久しぶりに渋谷と櫻井と新潟ですごい時間をかけて作業しました。サウナに入ったり、温泉に入ったりしながら(笑)。

立ち寄った海の家での思い出を語る渋谷

渋谷:サウナに行った後、海の家にも行ったよね。

温泉に入りながら、海を見ながら、3人で久しぶりにいろいろな話をしました。特に3人で温泉に入るのは5周年の時以来でした。それぞれ忙しくてなかなかスケジュールが合わなくなってきましたからね。

創業5周年のLP作成の際に3人で温泉に入ったときの貴重な写真

フラーはどんな強みを持っているのか、これからどうあるべきか、フラーを形作るキーワードは何なのか、本当にたくさん話をしました。

これまでであれば、こうして温泉などで経営陣がカジュアルに決めたものを、形式的な取締役会を経てそのままフラーのメンバーに伝えていく形だったんですね。

だけど、今回は温泉や海の家で話し合ってカジュアルに決めたものを、オフィシャルな取締役会にきちんと上程をして議論し、会社の決議事項として社内に共有しました。すごくいい良い流れの決め方だったと僕は思います。

フラーのカジュアルでフラットなカルチャーと、僕たちが目指す上場に向けたガバナンス強化の双方の良いところが取れたと思ってます。

以前の自分だったらミッションを決めたらすぐにコーポレートサイトに入れちゃおうぜ!みたいな感じです。何ならまずはLPから作っちゃう勢いですね(笑)。

山﨑:スピード感とガバナンス、やはりどちらも必要だと思います。どちらかにしちゃうと面白くなかったり、面白すぎて、あらぬカオスな方向に行ったりすると思います。そういう意味で今回のミッション策定の過程は本当にバランスが良かったです。

さまざまなミッション候補があった

櫻井が残していたアイデアメモを見ながら語る

ーーミッションが最終的に決まったのはいつだったのですか?

櫻井:2021年10月中旬でした。

ーーミッション策定にあたって、どんな言葉が候補に上がりましたか?

山﨑:アプリに限らずフラーはデジタル領域全般に対して事業展開しているので、アプリに限定しない言い方がいいなと思い、「手元」や「みんな」という言葉がまず出てきました。

櫻井:(iPadを見ながら)「人の拠り所」や「寄り添う世界」「助け合う世界」、そういった言葉がメモに残っていますね。

「フラーはいま、新潟や柏の葉といった地方で働く選択肢を増やしているよね」とか、「やっぱりデジタルを当たり前にするのを全国に広げていくことってすごく大切だよね」とか「デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタル化と言う言葉は、もっとフラーらしい表現のしかたがあるんじゃないか」とか、いろいろ書かれていますね。

iPadに記された候補ワードを眺める渋谷

渋谷:「デジタルを当たり前にしていく」という意味合いのワードは議論の当初からやっぱりあって、「当たり前にしていく」という表現は「手元に」という言葉でいいねとか、スマホっぽいしみんなの手元に届くという言葉はすごくいいねとか、そういう話もしましたね。

ーーなるほどですね。いろいろな案が出たのですね。

櫻井:「人に寄り添うデジタルを日本中で当たり前に」という候補も出ましたが、これは地域を限定する点がしっくりきませんでした。

「日本中」の定義って何?とか、海外出身・在住のメンバーがいるのに、日本にだけ限定していいの?とか、いろんなことを考えながらさらに言葉を紡ぎ出しました。

山﨑:さらに今回のミッションは「誰か一人でも嫌な気持ちになるような言葉は使いたくないね」と3人でずっと話していました。

そういう意味で、グローバルを見据えるというよりも、言葉を伝えるべき相手を限定したくないという思いの方が強かったですね。

3人でミッションづくりの過程を振り返る

渋谷:今回のミッションは社員も含めて世の中全部に向けて発信したかったんです。お客さんもそうだし、株主もそうだし、地域もそうだし。「みんな」という言葉には、それが全て含まれている感じです。

櫻井:フラーのものづくりのすごく大きな特徴として、自ら体験をして、課題や解決策を見出し、一緒に取り組んでいく「当事者意識を持つ姿勢」があります。デジタルの作り手としても、ユーザー・使い手としても、「みんな」を対象にしたい。そういう思いが込められています。

渋谷:「ヒトがヒトの手元にデジタルを届ける」というところを一番重視したいなと思ったんです。

「デジタルをみんなに」だけでも十分に成り立つと思うのですが、フラーが手がける「ヒトに寄り添うデジタル」を、「みんな」というヒトの手元に届け、身近にしたい、当たり前にしたい、そういう気持ちでですね。

フラーが選ばれる理由について山﨑が語る

山﨑:どうしてお客様がフラーを選んでくださるのかというと、「技術が優れているから」とか「なんだかイケてる会社だから」とか、そういうことじゃなくて、寄り添う姿勢で選んでくださっているところがすごくあるんじゃないかと、そういう事業への姿勢がすごくいいんじゃないかなと。

実際、あるお客様に「フラーのどこがいいのですか?」と聞いたことがあります。その時、そのお客様は「寄り添ってくれるから」とおっしゃってくれたんですね。

櫻井:ディレクターはお客様、クライアントさんのことをすごく考えるわけですが、それは一種のヒトに寄り添う姿です。さらに、その先のユーザーのことを考えて、クライアントさんと一緒に伴走していくのも、ヒトに寄り添う姿です。

つまり、本当に必要なものを作り出すためには、本当にヒトに寄り添わなきゃいけないんですね。これは渋谷や山﨑や僕が大切にしてきたことです。それがメンバーに伝わって、気がついたらヒトに寄り添っていたのだと思います。

フラーのメンバーは、ヒトに寄り添うことを大切にしてきた

山﨑:いままでは「ヒトに寄り添うこと」は暗黙知でした。小さな規模だったから、暗黙の了解で進めていたのですが、そろそろ言葉にしないと今後拡大していく時に伝わらないかなと。

渋谷:これから人が増えていく中、今回策定したミッションによって「寄り添うことが大事なんだ」ってフラーのメンバーみんなが思ってくれれば良いかなと思います。

拠点が沖縄や長岡など増えていく中、提供できる事業をもっと増やしていきたい、拡張していきたいという思いも、みんなという言葉には込められています。

山﨑:新潟でできたことを、もっと他の拠点でもできないか、チャレンジしたいなと思ってます。

実績として、長岡拠点もサテライトから、通常の規模の拠点として部屋を借りられる規模にすることもできました。

何かそういう意味でも地域に寄り添って活動ができたらいいなと。

渋谷:そうですね!さまざまな「寄り添うデジタル」が増えたらいいなって思います。(後編へ続く)

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます!もっと詳しくフラーを知ってみませんか?