フラーはなぜ北海道に拠点を? EZOHUB SAPPOROから育む地域貢献の新しいカタチ
フラーでは新たに北海道に社員を配置し、北海道内の企業や教育機関との連携を強化することにしました。その活動の拠点として、サツドラホールディングスが運営するEZOHUB SAPPORO(札幌市)と契約。EZOHUB SAPPOROを起点に地域貢献のさまざまな形を積極的に模索することになりました。
そもそも、なぜフラーは北海道内での活動を強化することにしたのでしょうか。EZOHUB SAPPOROを使ってどのような活動を展開するのでしょうか。EZOHUB SAPPOROを運営するサツドラホールディングスの富山社長、フラー会長の渋谷、フラー札幌拠点担当の木下の3人が北海道の魅力や可能性を語りました。(敬称略、EZOHUB SAPPOROにて取材)
北海道を新拠点のフィールドに選んだわけ
ーー北海道での活動を強化することにしたのはなぜですか?
渋谷:
フラーは千葉県の柏の葉に本社を置いたのちに、新潟から拠点を作り始めるという地方に根ざした会社です。そもそも地方にIT企業が少ないこともあり、いずれも採用や事業拡大の観点で高いニーズがありました。
そんな成功体験があった上で次の地方拠点をどこに置くか考えたのですが、北海道は創業メンバー4人のうち半分の2人の出身地という地縁があったんです。社員全体で見ても、北海道は東京・新潟に次いで3番目に多い都道府県別出身地となっています。
フラーメンバーにも多数出身者がいる高専についても、全国各地に高専が設置されている中で北海道は最も多い4高専が設置されています。ここも大きな魅力ですね。
そして何より、今日ここにいる木下という熱意ある北海道出身者がいたこともきっかけの一つです。
新潟支社のときも、立ち上げメンバーとなった僕の同級生二人が「新潟にぜひ帰りたい、地元に拠点を作りたくてしょうがない」という強い熱意を持っていたことが上手くいった要因でした。
木下は北海道拠点について、いつから作りたいと言ってたんだっけ?
木下:
僕はもう5年前の入社時点から口にしていました。まだ拠点作りの話なんて全くなかったのですが、「北海道に帰りたいです」って(笑)
もちろん自分の一存でなんとかなる話ではないのですが、ずっと言い続けてはいました。自分は北海道の人間で、いつか北海道に帰るんだと。
そんな中で今回こういった機会があったので、それだったら自分しかいないだろうと思って手を挙げたら…ようやく時が来ました!
渋谷:
そして大きな決め手は、何と言ってもオフィスです。フラーは柏の葉ではKOIL、新潟ではNINNOという新しい形のオフィスに居を構えています。
地元に帰る、となると古典的なオフィスに勤めることをなんとなく思い描きがちです。
だからこそ、イノベーティブな場所を拠点とすることで、オフィスに入った瞬間に「なんだこのおしゃれな場所は…!」と思ってもらえることがものすごく重要です。
これは採用にも働いているメンバーの満足度にも大きく効いてきます。なので、″イケてるオフィス″は外せないなと。
そんな思いで木下と一緒に物件を探している中で、このEZOHUB SAPPOROをご案内いただくことになりました。
木下:
オフィスが決まるまでは結局半年ぐらいかかりましたが、かなり初期の段階からすでに「EZOHUB SAPPOROがいいよね」みたいな話になってましたね。
渋谷:
会社としての意思決定をするためにいくつかの物件を比較検討する前提ではありましたが、僕の中ではかなり早い段階で決まっていました。
実際、あらためて調べてもEZOHUB SAPPOROはすごく魅力的だったんですよね。そこに集まる「ヒト」という観点でも素晴らしいコミュニティが出来ているし、何より富山さんがとても熱意を持って運営されていて。
富山:
ありがとうございます。渋谷さんとは今回のご縁でこうしてお会いすることができました。
EZOHUB SAPPOROの持つ力
渋谷:
EZOHUB SAPPOROを最初に訪れて驚いたのは、ドラッグストアのサツドラさんが直接運営を手がけているということです。これはどうしてなのですか?
富山:
ミッション、ビジョンを実現させていく源泉となるオフィスを作りたかったんです。
サツドラホールディングスは、創業からのミッション「健康で明るい社会の実現に貢献する」に加え、2019年7月に新たなビジョン「ドラックストアビジネスから地域コネクティッドビジネスへ」を策定しました。
このビジョンは、「モノを売る」だけの小売から、「モノ×サービス」を提供する小売へと変化が起きている中、ドラッグストアをコア事業としながら、地域に関わるあらゆるヒト、モノ、コトをつなぎ、未来を豊かにする地域コネクティッドビジネスへと進化し、地域を変革するプレーヤーになることを目指すものです。
その中核としてヒト・モノ・コトをつなぎコラボレーションを生み出すスタートアップ支援や協業を進めていました。しかし、そもそも我々自身に多様性がなければ、多様なプレーヤーとの協業はできません。
そこで、単にかっこいいだけでなく、本当に多様なプレーヤーとともに地域コネクテッドビジネスをサツドラはやっていくんだということを体現する場所として作ったのが、このEZOHUB SAPPOROです。
EZOHUB SAPPOROは、北海道の未来を担うキーパーソンが集まりつながるコネクティッドスペースとして北海道最大級の広大なスペースを誇ります。
人口減少、少子高齢化、地域間格差の広がりなど課題先進地域である北海道の社会課題を解決し、地域をより魅力的に変えていく。 そんな想いを持った仲間が集まる場所として作りました。
ご覧の通り、ブックラウンジではビジネス・リージョナル・サスティナブル・アートテクノロジーなど約3500冊の本が読めます。本を媒介に人が集まり教えあうことで、知識がアップデートされる場です。
EZOHUB SAPPOROの3階はサツドラの本社になっていて、そこから降りてくるとサツドラだけでない社内外の人たちが使える空間になっています。
実際、ハードを作っただけではなくここで人と人とのつながりが起きています。週に一回以上はなんらかのイベントがここで行われているんです。
今回フラーさんに来ていただけたことで、また新たなコラボレーションが起きることを予感しています。
渋谷:
僕たちとしても、拠点を作る上においてはやっぱり人とのつながりが重要ですし、人が集まる場所が自分たちのオフィスであることは、とてもありがたいことです。
富山:
普段は横のつながりが薄い社員が偶然集まったのをきっかけに「今そっち何してるの?」などとコミュニケーションが生まれ、社内でのコラボレーションが生まれるーー。そんな自然と人が集まりコミュニケーションが生まれる場所として作ったのが、このEZOHUB SAPPOROです。
わざわざアポイント取ってアジェンダ用意してーーではなくて、社内のみならず社外の方と自然に「最近どうですか?」と気軽なコミュニケーションが自然と生まれることが大事なんです。
木下:
1ヶ月ほどEZOHUB SAPPOROを拠点に仕事をスタートさせていますが、すでに知り合いが何人かできました。「おー、おはよう」みたいな。富山さんがおっしゃられた意義は実際にすごく感じますね。
安心できる地元でありながら、新しい挑戦ができる令和の北海道
ーー木下さんは北海道で現在どのような活動をしているのですか?
木下:
EZOHUB SAPPOROを拠点に活動を開始して間もないということもあり、現在は業種問わず北海道に関係する方々に積極的に会いに行く活動を続けています。
その中であらためて感じているのは、自分は実は北海道をあまり知らなかったんだなということです。北海道はとても広くて、自分が生きてきた生活圏なんてとても限られているんだなと。
だからこそ、北海道の中で自分の知らなかった場所で色々な活動されている方々のお話を聞くと、北海道とは自分にとって安心できる地元でありながら、新しい挑戦のできる環境なんだなと感じるんです。
富山:
木下さんのようにスキルアップを望んで東京へ出たけれど「いつか北海道に戻りたい、どこかで北海道と接点を持ちたい」と思っている北海道人はたくさんいるはずです。
ですが、自分の経験やスキルが北海道で活きるか、長く離れていたことで今の北海道がどうなっているかがわからなくて戻ってこれないでいるパターンも多いのではないでしょうか。
だからこそ、フラーさんの目指す北海道での採用や事業拡大はすごくチャンスのあることだと思います。
僕たちも、逆に東京にEZOHUB TOKYOという施設を“北海道の出島”と銘打って作りました。東京側に北海道の拠点を作ることで、戻ってきたい人たちに「今北海道にはこういう人たちがいてこういう仕事がある」ということをお伝えできればいいなと思っています。
渋谷:
育った環境が好きだったり、親元にいてあげたいという気持ちだったりを優先したいケースって絶対にあると思います。僕は地元に居続けたいという選択肢を応援したいんです。
フラーがオフィスを作ることで、北海道に残ってもワクワクする仕事があるという選択肢を一つでも増やせたらなと思います。
僕の地元の新潟でもそうですが、高専や大学を出て地元に残る割合は低いのが現状です。どうしたらいいのだろうと考えてたどり着いたのは、地域に面白い会社があることが学生にあまり知られていないのではないかという仮説です。情報を届けていくことが重要なのではないかと考えています。
富山:
サツドラのIT系のグループ会社にアルバイトに来てくれている子がいます。親元を離れての就職は難しいので、地元の北海道で働きたいと。すごく優秀で即戦力として活躍しています。
このように、地元で良い仕事を作れると学生と企業の良いマッチングができることにつながるのかなと思います。
渋谷:
おっしゃる通りですね。学生が参加できるインターンシップの開催数や情報そのものについても、やっぱり地方と東京では差があるんですよね。僕自身は学生時代にIT企業でインターンができたからこそ今があるのですが、東京に出てこないとその選択肢が生まれないわけです。
そういう意味でもサツドラさんのこのEZOHUBを取り巻く取り組みは素晴らしいなと思っています。
北海道にある独自のカルチャーや独自の経済圏にすごく可能性を感じますし、STARTUP HOKKAIDOをはじめとするスタートアップへの支援が手厚いのも魅力です。
フラーという会社としても、新潟のスタートアップ界隈という意味でも、どんどん北海道とつながっていけたらと思っています。コロナ禍で生まれた各地域のスタートアップエコシステムが、今度はそれぞれ接続し合ったらより面白いことになるなとワクワクしています。
富山:
北海道から日本的な世界のモデルを作っていこう、未来を作っていこうということがEZOHUB SAPPOROのテーマです。北海道を拠点にモデル作りをしていく企業を応援したいんです。
北海道にはフィールドとしての強みがあり、今で言えばアグリテックや宇宙に関する企業の多くが北海道にいます。また、実験場もあらゆる産業で北海道に作られていて、テストフィールドとして面白い場所なんです。地元の企業とそうやって出来た新しい企業とのコラボレーションの機運も高まっています。
北海道は今、この広大なフィールドで地域同士が変に対立することなく「みんなでやろう」という流れになっています。これもすごく大きなことですね。
また、北海道人の気質として実は「外から来た人を自然に受け入れる」というものがあるので、中から自分たちでイノベーションを起こすのももちろんですが、外から色々なものを受け入れることでダイバーシティからのイノベーションが起きるというのもあるんじゃないかなと。
渋谷:
確かに、オープンな感じがしますよね。組織にしても、それぞれ別々に見えても実は仲良い、みたいな。
北海道で新しい拠点を運営していくためにまず行政とお話をさせていただいたのですが、STARTUP HOKKAIDO、北海道庁、札幌市、経産省の方までお越しくださったんです。普通だったら各自治体や省庁ごとに3回以上はアポイントメントを取らなければいけないでしょう(笑)。
新潟でも見習うべきだなと思うのと同時に、オープン性がある北海道という気質ゆえの連携の強さを感じました。
可能性にあふれた北海道・フラー・EZOHUBの未来
富山:
地方は今、本当に可能性があると思います。その中でも、特に北海道には外部要因を含めて大きなチャンスが来ています。
例えば、千歳市に工場を建設する半導体大手のRapidus。水と気候、広大な土地という唯一無二の資産がある北海道というフィールドだからこそ選ばれたのだと思います。
さくらインターネットは石狩市でデータセンターを運用していますし、ソフトバンクも苫小牧市で運用を開始する予定です。十勝エリアには宇宙産業がどんどん生まれていますし、札幌市は経産省が定める「GX 金融・資産運用特区」にもなりました。
もともと非常に農業が盛んな北海道ですが、温暖化によってこれまで作付けできなかったシャインマスカットが育てられるようになるなど大きな変化が生まれています。
このように、北海道は今、あらゆる産業の集積地になる可能性に満ちています。
約150年前に開拓された北海道は今、令和の開拓が起きていると僕は思っています。それだけ北海道のポテンシャルはすごく高いです。次の50年がとても楽しみです。
ーー今後北海道でどんな活動を展開しますか?
渋谷:
新潟に拠点を設けた時もそうでしたが、まずは僕たちを知ってもらうことが重要です。そうしていくうちに、デジタル関係で困ったとき「フラーさんにお願いしようかな」と思い出してもらえるようになるかなと。
高専関係の取り組みなど、自分たちが北海道のためにやれることをやっていきたいです。北海道なり札幌なりのコミュニティに自分たちがいる意味を見出していければと思います。
そうして地に足つけて、北海道に馴染んでいく…これが僕たちの方針です。
さらに先の未来の話をすると、EZOHUBをきっかけに新潟と北海道をつなげていきたいです。
新潟県内では今すごく企業間のコミュニティが盛り上がっています。「新潟の次は北海道へ」となれば、新しい人と人のつながりやビジネスチャンスも生まれます。逆に、北海道の皆さんにも新潟へお越しいただけたら嬉しいです。
木下:
フラーに5年勤めて、僕はつくづくこの会社の『人』や『コミュニティ』が好きだなと感じています。
だからこそ、北海道に帰る際はUターン転職しかないのがすごく残念でした。
それが今回、僕は大好きなフラーを北海道に持って来ることができました。
北海道拠点立ち上げの担当者として、北海道の方々にフラーを好きになっていただきたいし、フラーというコミュニティを通じての幸せを北海道にも広めていきたいと強く思っています。
ーーEZOHUBをどんな場所にしたいですか?
富山:
EZOHUBはとにかく、たくさんのコラボレーションの起こる場所にしていきたいです。ここがきっかけで何かが起こる。それは必ずしも我々が絡んでなくてもいいんです。いつの間にかこんな面白いことが起きていた、そんな驚きを作っていく場所になればと。
そのためには色々な属性の方々がミックスしていくのがすごく良いことだと強く感じています。今回、フラーさんが来てくれたことがとても嬉しいし、また新しい何かを起こすきっかけになればと思います。