フラーが長岡花火のPR動画まで作った理由 〜アプリ制作だけじゃない、共創の姿勢〜
フラーは、日本最大花火の一つ『長岡まつり大花火大会(以下、長岡花火)』において、公式アプリの開発を手がけています。
2017年から配信を開始したこの長岡花火公式アプリは、2019年には大会当日2日間でユーザー数10万人を突破し、ストアカテゴリでは3年連続となる1位を獲得しました。
一方で、長岡花火においてフラーは、アプリ開発だけでなく、ITの力を使ったさまざまな面からのサポートを行っています。
その一環として、昨年の2019年は、長岡花火の公式動画の制作を行いました。
「長岡花火チームのデジタル部門だと私は思っています」━━そう語る長岡花火公式アプリ担当ディレクターと、公式動画を制作したデザイナーに、フラーの掲げるアプリ制作だけでない『共創』の姿勢について、動画制作の裏話とともに聞いてみました。
宮﨑朋美(みやざき ともみ):
大阪府出身。大阪大学卒業後、大阪府庁入庁。その後、結婚を機に新潟へ移住。大手新聞社、通信社勤務を経て、2018年10月フラー株式会社に入社。現在はディレクター兼ユニットマネージャー。趣味は自治体職員目線で地域の課題を見つける国内旅行
田中 大貴(たなか たいき):
山梨県出身。千葉工業大学大学院を卒業後、デザイン制作会社に入社。映像クリエイターとしてYoutubeチャンネルの運営に携わる。2019年フラー株式会社に入社。現在は「Snow Peak(スノーピーク)」公式アプリやNintendo Switch用ソフト 「あつまれ どうぶつの森」のゲーム連携サービス「タヌポータル」などを中心に、UI/UXデザインを担当している。
━━長岡花火における、担当のお仕事を教えてください
宮﨑:
長岡花火公式アプリのディレクターとして、開発チームのディレクションと、長岡花火を運営されている長岡花火財団さんとの各種調整・コミュニケーションを担当しています。
アプリ以外でも、長岡花火公式動画の企画やディレクションなども行っています。
田中:
私は、デザイナーとしてフラーで働いています。ただ、長岡花火公式アプリではデザイナーとしては関わっていないんです。
動画編集を前職でやっていた経験から、今回の公式動画の件についてだけ、部分的にジョインする形になりました。
動画については、編集だけでなく構成や撮影も担当しています。
━━今回の動画案件はどのようにして始まったのですか?
宮﨑:
長岡花火財団さんから、「海外のお客様へのPRを強化したい。そこで動画を作ってみたいのだけど、フラーさんはできますか?」とのご相談をいただいたことからですね。
インバウンドに向けて訴求力を強化したい、という。
田中:
実は、海外の方が撮った長岡花火の動画が、やはり海外の方々の中で人気になっているんです。なので、そういうものをせっかくなので公式でも作りたい、という背景もあったようです。
宮﨑:
フラー自体はもちろん動画制作の会社ではないのですが、これまでのアプリ制作で培った信頼感と実績でこのお話をいただけました。
アプリのデザインなどを高く評価していただいているところが大きいかなと思っています。「アプリのデザインのようなテイストで!」という要望がありました。
とにかく、フラーならなんとかしてくれるだろう、という期待値ベースのご依頼です。
こういうお話をいただける関係を築けていることを考えると、長岡花火に対するフラーは、アプリ制作会社としてのお付き合いというより、『長岡花火チームのデジタル部門』だと私は思っています。
今回の動画以外にもこういったお話をいただくことはありまして、最近だと、ビデオ会議用のバーチャル背景を作りました。
━━動画は、よくある花火が中心のものではなく、それに関わる人々や文化に焦点を当てたものになっているように見えます。これは、どんなコンセプトで作ったのですか?
宮﨑:
長岡花火においては、花火そのものはもう、すでに日本三大花火として有名です。観覧客の皆さまもたくさんいらっしゃいます。
それだけに、花火の大きさやお客様の多さなど、派手な面がやはり取り上げられがちです。
しかし、だからこそ、海外向けに「日本らしさ」や「長岡花火を支えている人たち」という面をクローズアップした動画を作ってみたい、というご要望を財団さんからはいただきました。
長岡花火自体は慰霊の花火であり、地元の復興を願うものです。他の有名な花火大会はいわゆる競技花火で点数をつけるのですが、長岡花火はそういうことはしていません。
ですので、派手なところだけでなく、地味だけどとても大切な内側の面もクローズアップしていきたい、というお話です。
田中:
そういったことを踏まえ、動画の制作担当の自分としては、イメージボードで構成を練っていたときから「日本の文化に触れる」「長岡・新潟の文化に触れる」ということを考えていました。
日本の文化にクローズアップすることで、まずはメインターゲットである海外の人に観てもらえる、楽しんでもらえるように。
それから、長岡・新潟についてクローズアップすることで、日本人の興味も惹けるような映像になるんじゃないかな、と。
また、「どのように花火大会が作られているのか」ということもストーリーとして表したくて、『花火師さん』たちについても映像の中で触れていきたいなと考えました。
(画像:イメージボードの一部抜粋)
宮﨑:
財団さんはもちろん、フラー側の開発メンバーにも、長岡が地元だというメンバーは多くいます。でも案外、花火の裏側については知らなかったりするんです。
なので、地元の方にも花火について改めて知ってもらえたらな、という思いもあります。
田中:
そのため、花火自体はあまり映さないことも撮る前から決めていました。
実際、撮影が始まると花火以外で良い素材がたくさんできて、結局、本当に花火はあまり動画に映っていません。
撮ってきた素材映像を見て、フラーの新潟出身の方々や長岡花火財団の方々が「あ、こんなこともやってたんだ、知らなかった!」なんてコメントをされていたのが印象に残っています。
地元の方も知らないこと、というのはいろいろあるのだなあと。
━━実際の動画制作は、どのように進めましたか?
田中:
大会当日中はとにかく良いシーンが多くて、たくさんの素材映像を撮ってしまいました。撮れ高がありすぎて、それを5分の尺に納めるのが何より大変でしたね……。
なので、素材映像の中でも「最上級」だと思ったものだけで、本番の動画は作ってあります。
この最上級というのは、構図がバッチリ決まっているところ、という定義です。
自分なりにこだわったのは、懸命に準備されている財団さんを含めたスタッフさんたちの姿や、かっこよく佇む警備員さんたちの姿など、裏側の方々がどれだけ頑張っているのかがわかる光景をしっかりと映像に入れることです。
宮﨑:
財団さんからは逆に、「ここまで裏側ばかりではなく、もうちょっと派手なところを入れませんか」という声もいただきました。
財団さんとしては、花火師さんたちならともかく、自分たちの頑張りはプロモーションムービーに入れるようなものではないとお思いになったのかもしれません。
それよりも、やっぱりお客さんや花火をもっと映した方がいいんじゃないか、と。
ですが、そこはもう熱い長文メッセージを送らせていただいて、しっかりご説明しました。
財団さんからは、「花火財団のように長岡花火を考えてくださってありがとうございます」なんてお言葉も頂戴しました。
ご要望を取り入れるのは簡単なのですが、私たちとしては、やはり当初のコンセプト通り行くのが最善だと感じていました。
お客さまにとっての最善ではないとわかっているのに、ただお客さまのおっしゃる通りにしてものを作るというのは、『共創』を掲げるフラーとしては、やはりやるべきではないかなと思っています。
━━こういったディレクターのこだわりや姿勢については、動画制作の担当者としてはどのように感じましたか?
田中:
僕は当時入社したばかりだったのですが、単純に「いい会社だな」と思ったし、「共創っていうのはこういうことなんだな」というのを、宮﨑さんの姿を見て肌で感じました。
請け負って言われた通りにやるだけじゃなく、きちんとこちらの考えを先方に伝え、より良いものを一緒に創る……そういうスタンスは、特に作り手としてはすごく良いものに感じます。
フラーのディレクターさんと働くのは楽しいし、頼もしいですね。
僕は作り手としては弱気で、向こうがこう言ってきたらつい「はい」と言ってしまいがちなので、とても頼りになります。
宮﨑:
チームの仲間からそういう風に思っていただけるのはありがたいし、うれしいです。
やはり「財団さんが最高のものを外部に出せるように、まず自分たちが財団さんに一番良いものを提案・提供していきたい」という思いがあるので、そこに妥協なく仕事をしています。
そういったことができるのも、普段から関係を密にしているからこそ。財団さんとは、とても良い関係を築かせていただけていると思っています。
━━動画を長岡花火財団さんにお披露目したときの反応はいかがでしたか?
田中:
「おー!」と喜んでいただけるかなと思っていたのですが、まずはみなさんいろいろ考え込まれていて……(笑)
……作った側としては、ちょっと不安になってしまったというのが正直なところですね。
やはり、花火の映像があまり含まれていない点について、「これはどうなんだろう」と思われたようです。
なので、その場で改めて、「花火だけでなく、文化や街の魅力などをきちんとお伝えしたい」というコンセプトをご説明しました。
宮﨑:
困惑、というのは確かにちょっとあったかもしれません。『花火そのものはあえてあまり映さない』今回のコンセプトについて、詳しく知らなかった方々もその場にはいらっしゃったので。
ただ、私の目には、ネガティブに固まっているというよりは、見入っているというか、引き込まれているように見えました。今回の動画は、派手さというよりストーリーを感じる映像なので、そういう反応になったのかなと思います。
「もう一回見せて、もう一回見せて」と何度もご覧になられていたのが印象に残っています。
最終的には、コンセプトを含めてご好評をいただくことができました。
━━公開後の反響はいかがでしたか?
田中:
友人たちから言っていただけたのですが、「エモいね」という感想が印象的でした。
また、長岡を地元に持つフラーメンバーには、
「地元の人はあまり前夜祭に行かなかったりするし、大会当日も観覧客の皆さんが行く席から観ることはない。だから、そのあたりがしっかり映った今回の映像は、逆にとても新鮮。
また、花火師さんのお仕事も含め、大会の準備や大会などは見慣れているがゆえに『あって当たり前』と思ってしまっている部分もあったが、これを観ることで改めて感謝ができた」
という感想ももらうことができました。
宮﨑:
SNSなどでも色々シェアしていただけました。「花火行きたくなった」なんて声も。
残念ながらSNS上の反応だけでは、私たちが伝えたかった裏側の魅力を表現し切れたのかどうかまではわからないのですが……ただ、個人的な友人たちからは、そういうところを汲み取った感想もいただけました。
嬉しかったのは、財団さんが、ホノルルの花火大会でのプロモーションや、東京オリンピックに新潟県で出展する観光ブースでも使いたいと言ってくださったこと。残念ながら、それらは新型コロナウイルスの関係で中止になってしまったのですが……。
ただ、アオーレ長岡という大きな官民複合施設にて、スクリーンに流していただくことはできました。
「色々な場面で活用したい」というお言葉と実際の提案をいくつもいただけたことが、財団さんからの何よりの評価かなと思っています。
━━これからの目標や抱負、意気込みを教えてください
宮﨑:
これからも、お客さまと並走する関係でいたいと思っています。
色々な考え方あると思うのですが、私は、お客さまからはいつでもご相談いただけて、こちらは可能な限りフラーでできることすべてでそれに応える……そんな関係がいいな、と。
また、「実は課題として現れているけど、まだお客さまがそれに気付いていないこと」について、きちんとお伝えして一緒に解決し一緒に進んでいくというスタンスも、これからもきちんと続けていきたいです。
こういう考えは賛否両論あるかもですが、私にとってはそれが理想です。
財団さんとは、まずは今の良い関係を維持していけるようにしていきたいですね。『長岡花火チームのデジタル部門』として信頼し続けていただけるよう、引き続き、質の良いプロダクトを作っていきたいです。
また、今までお仕事で関わってきた方以外の、財団さんの全職員さんと仲良くしていけたらな〜、なんてことも思っています。
財団さんだけではできないこと、財団さんの中からではどうしても出てこないことなどについて、外側にいるフラーだからできる提案が、きっとまだまだたくさんあると思います。
フラーを突破口にして、これからも財団さんが新しいチャレンジをどんどんできるようにしっかりサポートしていけたら嬉しいな、そういう関係でありたいなと願っています。
田中:
フラーメンバーとしては、宮﨑さんが言われたことがすべてだなと僕も思います。
デザイナーとしては、最先端のものを常にキャッチアップし続けて、お客さまに「これが時代の先を行っている」というものをしっかりお出しできるようにしていきたいです。
もしそれがお客さまが最初に作りたがっていたものとは違ったとしても、提案すべきはきちんと提案して、しっかりコミュニケーションを取り、最善のものを一緒に作っていけたらなと思っています。
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今回は、長岡花火公式動画を手がけたお二人にお話を聞きました。
制作したPR動画はこちら! よろしければぜひご覧ください。
SNS編(30秒):
本編(3分24秒):
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