デジタル時代を生き抜く、統合するデザイナー
フラーのデザイン組織『フラーデザイン』は、デジタル領域のデザイン特化組織です。
デジタルに特化した専門家集団として高いスキルを追求するとともに、ビジネスを自分ごととして捉え、時代の先を読み、ヒトに寄り添うことで、表層にとどまらない柔軟で実装可能な“本当に必要とされるデザイン”をパートナーと共に創っています。
この記事では、そんなフラーデザインが考えるデザイナーとそのあり方についてお伝えします。
書き手はフラーのCDOの櫻井です。
はじめまして、フラー株式会社CDOの櫻井です。
フラーは「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」をミッションに掲げ、主に大手企業のさまざまなデジタルプロダクトを手がけている会社です。
今回は10年間、アプリの市場分析から企画・デザイン・開発まで幅広く手掛けていくなかで、このデジタル時代を生き抜くデザイナーのあり方についてお話できればと思います。
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この内容はDesignship2022でのスポンサーセッションとしても一部お話しさせていただき、さらに深ぼってお話できればと思います。
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デジタル時代の職種の細分化
ここ最近、IT界隈の様々な会社のデザイナーさんとお話ししていく中で、UXデザイナー、UIデザイナー、グラフィックデザイナー、ストラテジストなどなど、様々な〇〇デザイナーが増えてきているように感じます。
1991年に世界初のウェブサイトが生まれ、ウェブデザイナーと言う肩書が生まれ、2007年にはiPhoneが誕生し、UI/UXデザインという言葉が生まれこの30年間で日本でもデザインの役割や役職の形は大きく変容してきたのが背景にあると思います。
他の会社をのぞいてみましょう。
Google DesignであればUX Writer, Motion Designer, Interaction Designer, UX writer, Visual Designer…
Samsung DesignであればProduct Design, CMF Design, Sound Interaction Design,Physical Interaction Design……
デジタル業界も歴史を重ねることによって業界の幅も広がり、プロダクトのタイプ・サイズの幅も広がり、関わる人数も広がり、「デザイン」そのものが会社よってどのような役割なのかが多種多様になってきているのが現状です。
細分化されることによってのメリット・デメリット
メリット
細分化されることの素晴らしさは、様々あります。
その領域に対しての専門性が高まり部分的なクオリティが上がりやすい(品質)
その領域にフォーカスすることでスキルを磨きやすくキャリアパスを描きやすい(成長)
採用という観点でも何をやるのかも明確になるため訴求しやすい(採用強化)
など色々なメリットもあると思いますが、それと引き換えにデザインをしていく上での困難性も同時に出てきているように思います。
デメリット
大きくは2つ
各職種の連携のしにくさ
領域を超えたデザインの導きにくさ
順を追って説明していこうと思います。
1. 各職種の連携のしにくさ
デジタルプロダクトを創造し続けるためには、戦略を考え、体験の軸を構築し、画面をデザインし、実装して運用していかなければいけません。
ここで論点になるのは、細分化されることによって、意思疎通をするためのコミュニケーションパスが多くなることにあります。
これらのコミュニケーションパスをうまく連携をするために、コンセプトボードや仕様書・デザインシステムなどなど会社によって様々なフレームを用いて連携をしていくわけですが、いくら仕組化しようとしてもコミュニケーションパスが多くなれば連携は自ずと難易度が高まっていきます。
具体的なところで言うと
伝達するための会議体や意思決定者も多くなり、工数が嵩む。(時間かかる)
背景をうまく理解できず、腹落ちしないままデザインをする。(モチベ上がらない)
うまく伝わっておらず、方向性と違うアウトプットが出てくる。(誤解によるミス)
うまく連携できていれば、それぞれの領域の品質が高まり、最終的なプロダクトの品質も上がるのでこれはまさに内部の仕組み次第のところかと思います。
2. 領域を超えたデザインの導きにくさ
上流から下流に向けて、最終的には人間の触れる部分をデザイン・実装をしていくわけですがコミュニケーションパスが多くなるほどにコンテキストは薄まり下記のような弊害も起こる可能性も高まります。
多面的な考慮を十分に考えられたスタイリングが生まれにくい
ビジネス展開を考慮した体験・サーバー設計を構築しにくい
デジタル時代の重要なデザイン
前述したとおり、ここ最近は職種が細分化され、つまりは領域同士の化学反応が起きにくい課題も出てきている中で、デジタル時代でのデザインは「領域を統合する力」がより重要になってくると考えています。
ヒトと技術とビジネスと
デザイン思考という言葉も日本でも大分知られ、日本語でGoogle検索をすると「スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所」の五段階プロセスのものが多く出てくるため見失いがちなのですが、IDEOでのデザイン思考の定義は
デザイン思考では、人々のニーズ(HUMAN)と、技術的に実現可能(TECHNOLOGY)なもの、ビジネス戦略として実行可能(BUSINESS)なものを統合させていくことの重要性を説いています。
デジタル時代に重要となる3領域の統合
デジタルプロダクトのデザインにおいては、人々のニーズ(HUMAN)と、技術的に実現可能なもの(TECHNOLOGY)、ビジネス戦略として実行可能なもの(BUSINESS)、この3つの領域は特に重要となるファクターと言えます。
いくらビジネスモデルがしっかりしていて、良い体験を構築できたアプリでも、毎回アプリが落ちてしまえば良いものと言えないですし、いくら技術がしっかりしていても使うシーンを上手く描けていなければ使われない。
さらにデジタル時代では、流行り廃りも新陳代謝も早く、AppleやGoogleなどのプラットフォーマーの開発環境も常に変化し、ビジネス要件においても技術要件においても1年で前提条件が変貌する領域です。だからこそ統合しやすい状況を創り出すことが重要になってきます。
デジタル時代を生き抜く統合デザイナー
デザイン領域を統合するデザイン
前述した3領域の図と細分化された職種を当てはめると下記のような形になります。
フラーでは、モノづくりに関わる職種を「ディレクター」「デザイナー」「エンジニア」の大きく3職種おり、それぞれがフラットの関係性で、まさにこの3領域を各々に背中を預けながら、モノづくりに向き合っています。
そして、本題であるデザイン領域においても「UI/UXデザイナー」という枠組みは設けておらず、画面をつくるだけ、体験を作るだけでなく、このHUMANの領域を統合できるデザイナーを理想とし、その形こそがデジタル時代を牽引していくデザイナーと捉えています。
統合されることの楽しさ・難しさ
では、これらを統合し一人のデザイナーが責任を持って行うことでどのような良さがあるのか。
コミュニケーションパスは減り、連携がしやすい。(職種間連携の円滑化)
意思決定できる領域が広く、デザインをコントロールしやすい。(デザインのしやすさ)
できることが広くなればデザインはもっと楽しくなる(デザイン楽しい!!)
一方で統合することの難しさもあります。
幅広いスキルが求められるため、難易度が高い。
一つ一つの領域に特化しないため、深く入り込む時間がない。
難しさはありますが、フラーではデジタルプロダクトをより良いものを創るためにこのスタンスが一番良い形だと考えています。
なんといっても一番の良さは「ヒトのことを考える第一人者」=「デザイナー」というシンプルなスタンスでいれることなのかなと思います。そしてその形こそ、デザインをより楽しむことができ、成長していく上でも大切なことなのではないかと、ここ最近強く思います。
最後に
職種のカタチに正解なんてない
今回は職種の細分化のお話から統合デザインのお話をしましたが、会社によって扱うビジネスも、プロダクトタイプも、サイズも様々です。
フラーでは、統合的な考え方が現状のデジタル環境や思想に合っているからであって、扱うモノによっては細分化し専門性を高めていくことが良いモノづくりにつながることもあります。これら職種定義には正解があるわけではなく、その会社のデザインのカタチそのものが表れます。
これを読んでくれているデザインに関わる方々は、どのようにデザインと関わっていきたいと思っているでしょうか? 今の時代、デザインの関わり方・向き合い方はより多様化しているからこそ、今一度デザインと向き合う機会をつくってみてはどうでしょうか。
仲間を募集してます
フラーでは2022年の7月にフラーデザインというブランドを立ち上げました。
上記の話にもつながりますが、体験を考えることも、画面のディテールを考えることも、プロモーションの見せる部分も、「はじめから、ぜんぶまで、”ていねい”をつらぬく。」そんな想いや考えに共感してくれる仲間と一緒にデジタル業界のデザインを盛り上げられたらと思っています。
ご興味ある方はぜひこちらからのエントリー、お待ちしています。