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社内コンペで気づきと成長を。フラーの内定証書デザインプロセス(後編)

10月に開いたフラーの2023年新卒内定式で手渡した内定証書。フラーのデザイナー組織「フラーデザイン」のデザイナーが作成したもので、社内コンペで選ばれました。

フラーのデザイナーはどんな思考やプロセスを経て一つのものを創り上げるのでしょうか。普段はなかなか見えにくいフラーでのデザインの過程について、内定証書を事例に紹介します。

後編では今回のデザインコンペで審査を担当したCDOの櫻井とコンペの運営を担当したデザイナーの小野田が経緯や思いを語りました。(撮影時はマスクを外しました)

CDOの櫻井(右)とコンペの運営を担当した小野田(左)

取締役副社⻑CDO 兼 デザイングループ⻑
櫻井 裕基(さくらい・ひろき)
プロフィール:1989年生。新潟県出身。国立長岡工業高等専門学校卒業後、千葉大学工学部デザイン学科へ編入学。2012年にフラーに参画し、2014年1月に取締役、2019年6月に副社長に就任し、現在は取締役副社⻑CDO 兼 デザイングループ⻑(最高デザイン責任者 Chief Design Officer)。ユメは世界一働きやすい会社を創ること。

↓櫻井が登場した記事はこちら↓

↓櫻井執筆の記事はこちら↓

デザイナー
小野田 洋幸(おのだ・ひろゆき)
プロフィール:新潟県出身。ベンチャー企業などを経て2012年に大手ネット企業に入社。アプリの新規開発を始めとした複数サービスに携わる。2020年フラーに入社。入社をきっかけに東京から故郷へUターンし、現在は新潟本社に勤務。

↓小野田が執筆した記事はこちら↓

自分に向き合うデザイン・競うデザイン、異なる環境で気づきと学びを

柏の葉本社の畳スペースでコンペについて振り返る小野田と櫻井

コンペの開催のきっかけは、フラーデザインが7月に実施したデザイナー合宿でした。

櫻井:デザイナー総勢20人が一堂に会した合宿では、成長しやすい環境づくりをテーマにさまざまなワークショップやディスカッションをしました。そんな中、あるデザイナーから「みんなでもの創りができる環境がほしい」といった内容の発表がありました。それは、フラーにおけるデザインという営みが“自分と向き合う”ということの裏返しでした。

普段手がけるデジタルパートナー事業におけるクライアントワークとしてのデザインは、クライアントの求める要件やデジタルプロダクトデザインにおける定型など、多くの制約条件が当然のことながら付きまといます。

同一のテーマで各人がデザインをする機会は、フラーではなかなかありません。通常のクライアントワークのデザインで社内コンペのような手法は取っておらず、プロジェクトにアサインされたデザイナーが担うからです。

プロジェクトにアサインされたデザイナーは誰かと競ったりするのではく、基本的には自分自身と向き合い、そしてデザインする形になります。

一方、同じテーマで各人がデザインをすると、各々の違いが見え、それだけで気づきにつながります。競う要素があることで普段と違う環境やシチュエーションのデザインをする訓練にもなります。

そこで、普段の現場のデザインから少し離れて、純粋にフラーのデザイナー同士が競い、切磋琢磨することでいつもと違ったもの創りの環境をつくるとともに、若手を中心に各人のレベルアップが図ろうと、デザイナーのマネージャー陣と相談して初の内定証書コンペを実施することにしました。ちなみに、内定式自体もフラーとしては初めてでした。

↓内定式のレポート記事はこちら↓

ベテランデザイナーの小野田は事務局として若手の姿を見つめました。

小野田:今回のコンペは傍観できる立場だったのもあってめちゃめちゃ面白かったですね。通常のクライアントワークの場合、フラーのデザイナーはデジタルプロダクトの一定のレギュレーションがある中である種の“型”を勘案しながら上流工程のデザインを手がけます。

しかし、今回はその型は無く、会社のこれまでの取り組みとしても存在しません。アプローチが自由な分、色々なことができて面白いなあと思いました。

あえてゆるい要件、でも審査は“しっかりと”

審査のスラックを見ながらコンペの内容について語る

デザインの自由度を高めるために、要件はあえてゆるく。
でも、審査は本気で真正面からデザインに向き合うものとなりました。

櫻井:コンペのデザイン要件はあえて「ゆるい要件」としました。それは決していくらでも時間とお金をかけてつくっていいという訳ではなく(笑)、先ほど述べたような制約や定型から解き放たれ、ゼロベースでもの創りをすることの楽しさや大変さを味わってもらいたかったからです。

普段のクライアントワークのようにデザインに関する要件や制限がある中でのデザインに比べ、今回は自由度が高い分色々なアプローチがあったなあと思いましたし、どのアプローチも個性が出やすかったですね。

審査はCDOの櫻井と社長の山﨑がしっかりと審査・レビューを実施しました。辛口な部分も含めてこんなに本気でレビューをされるとは参加者も思わなかったのではないかなと思います。クライアントワークのデザインレビューと同様の本気のレビューがスラック上で繰り広げられました。

スラックでの櫻井の審査コメント

今回のコンペに参加したデザイナーは入社1年目の新卒メンバーを含め4人。優勝したのは、入社2年目の久保楓さんの作品でした。コンセプトとアプローチのつなぎこみ、そして“描く力”が決め手になりました。

小野田:審査のポイントは、新卒にとってどれだけ魅力のあるコンセプトメイクができているのか、そして、そのコンセプトに対してかけがえのない一回にふさわしい、美しいアプローチができているかの2点でした。

久保さんは「花束をおくる」というコンセプトメイクと実際のアプローチを見事にプレゼンテーション。それが優勝のポイントとなりました。久保さんはラフの時点でのコンセプトとその後のアプローチの見せ方も含めて完成度が高かったです。

櫻井:優勝の特に大きな決め手は“コンセプトを軸にした表現力”でした。実際に手にとって見られる内定証書はやはりグラフィックが重要です。その意味において、そういった観点でそれぞれのデザインを見ると、久保さんは言語化した上での表現が得意なんだなあと感じました。参加した他のメンバー含め、多くのデザイナーが久保さんの描く力から多くのことを学んだのではないでしょうか。

↓久保さんのデザインプロセスがわかる記事はこちら↓

“悔しい”はかけがえのない経験になるから

コンペでの失敗や悔しさこそがデザイナーにとってかけがえのない経験になると先輩デザイナーの二人は強調します。

櫻井:コンペを実施した結果として、参加したデザイナーそれぞれの個性をあらためて確認することができました。

選ばれなかったデザイナーは多少なりとも悔しさがあったと思います。なかなか競争する機会がなかったわけですからね。でも、この「負けた」「悔しい」という思いを作ること自体、すごく大事なんだなと思いました。

社内コンペでこの「悔しい」を作れるのがいいなと思いました。選ばれなかった人にとっても得るものがあったのではないかと。

小野田:参加したデザイナーは「こんなにしっかりレビューされるコンペだったんだな」と感じたと思います。惜しくも優勝を逃したデザイナーは自分が負けたという経験がはっきりできただろうし、それが悔しさにつながってきますし、鋭いレビューでも悔しさを覚えているのではないかと。

でも失敗すること、悔しいと思うこと、それこそがデザイナーとして長い目で見て本当にかけがえのない経験になるはずです。

今後もコンペを実施することで、フラーのデザイナー組織であるフラーデザイン全体の成長につながるとCDOの櫻井は考えています。

櫻井:今回の内定証書は、やっぱり内定者のことをよく思いやり、考えてくれている人の内定証書だなと思います。そのデザインそのものについて内定式で僕が語ることができるくらいに。久保さんも自分のデザインが世の中に出たし、内定者15人にとっては忘れられない経験です。

今回のデザインコンペと同じようなことをぜひまたやりたいなと思います。悔しい思いをした人にとってはリベンジになるし、普段と違うもの創りできっといい刺激になりますし。クライアントワークとは別軸の成長する仕組みをこれからも創っていければと思います。

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