ものづくりから、まちづくりへ。 〜「common」チーム記事デザイナー編〜
東急株式会社が手がける「common」は、街への貢献の場を通じてご近所さんとの共助関係を生み出し、より良い街をみんなでつくるサービスです。
2023年1月現在、以下の2つの機能をメインに提供しています。
・街の情報や、困りごと・相談を共有する「投稿機能」
・ご近所さんと不要品を譲り合う「譲渡機能」
この「common」において東急株式会社と共同開発を行ったフラーは、単にアプリの開発だけでなく、効果的なアプリの改善や施策を行うためのデータ分析から、プロダクトをユーザーに広めるためのプロモーション施策の企画提案・デザイン物制作まで、幅広い領域で戦略を共に検討。業務全般で伴走し、プロジェクトを進めています。
その中で、実際にエンジニアリングやデザイン、ディレクションを手掛けたフラーのメンバーは、どのような思いをもって取り組んだのでしょうか。
今回は、「common」のデザインを担当したデザイナーの長谷川 泰斗が、プロダクトへの思いやその魅力を実例を交えて語りました。
街の一員としてデザインする。
自分自身のペルソナを決める。
本プロジェクトに関わって、ずっと意識してきたことは自分自身のペルソナです。自分はもちろん仕事として「デザイナー」というペルソナを持っていますが、今回は、「どんなデザイナー」として向き合うかを強く意識してプロジェクトに向き合ってきました。
commonは、まちづくりという大きなテーマから出発したプロダクトです。こうしたスケールの大きいテーマでは、どうしても視点が高いところに行きがちですが、実際に街について考えるにあたって、自分も街の一員であるという意識を常にもってプロジェクトに関わることにしました。
20代、男性、デザイナー、街を楽しくしたい、体力とスピードが持ち前、坦々麺が好き——それが街の一員としての自分です。
ただのデザイナーではなく、こうして街の一員としての解像度を鮮明に持つことで、街に存在する課題や要望を当事者の目線で吸い上げることができていると感じています。
街の人と一緒につくる
このプロジェクトに関わるメンバーは、仕事仲間である一方で、「街の人」でもあります。日々のミーティング一つとっても、仕事というよりは街をより良くしたい人同士のディスカッションという印象が強いです。
こうした背景もあり、わたしたちはこのプロダクトを作っていくにあたって、実際にプロダクトを使ってくださるユーザーの方々も「街づくり」というプロジェクトの一員であると捉えています。そのため、新しい機能をリリースする際には毎回必ずユーザーヒアリングを行ない、「データだけで判断するのではなく、街の人と実際に対話を重ね、一緒に作る」ことを意識しているのです。
作り手、使い手を分け隔てず、みんなで作っていくという方針は、このプロダクトを通して実現させたい「街づくり」の在り方そのものであり、自らも街の一員であるという意識によって生まれる開発体制でもあると感じています。
形作ることを最優先に
デザイナーの特権は形を作ってしまえることだと思います。もちろん、言葉を使って言語化を進めていくこともデザイナーの仕事のうちですが、今回のような「街づくり」という、ある種正解がはっきりわからない、常に正解が更新されつづけるようなテーマにおいては、とにかく形を与える、壊す、また作るを繰り返すことが重要であると判断できます。
そのため、多種多様な意見が飛び交う中で、まずはデザイナーである自分が形にしてしまうことを意識していました。見方によっては強行な手段とも取れる方法ではありますが、思考を一度形としてアウトプットし、それを再度観察できる状況を作ることで、議論の整理に貢献できたと思います。
アウトプットに対し、真正面から意見をくださる東急様、プロジェクトのメンバーには本当に感謝しかありません。
コンセプトの立案から、一枚のポスターまで。
プロダクトを生み出すところから、送り出すところまで。
ファーストリリースでは、プロダクトのコンセプト立案から、アプリのUI設計といったプロダクトを生み出すフェーズから始まり、公式サイト、フライヤー、ポスター、名刺サイズの販促物といった送り出すところまで、全てデザインしました。
プロダクトの一番おいしいポイントや伝えたい雰囲気を着実に伝えたいときは、作り手自らが手がけた方が筋やコンテキストが行き届いたデザインができます。プロモーションは外部に委託するといった判断も多い中で、主体的に丸ごとデザインできたことは、自分のスキルの幅を広げるきっかけになりましたし、自分がデザインしたものを自ら届けることができた体験は、作り手として一番嬉しいことだったなと振り返ってみて感じます。
ものづくりから、まちづくりへ。
このプロジェクトに関わってから、駅構内に貼られたポスター、電光掲示板で煌めくサイネージ、家に届いたフライヤー、手元で起動したスマホの画面、それら全てが街の景観として認識されることに気づきました。
このcommon全体に掲げているビジュアルコンセプトが「街を包む青空」です。
スマホ、サイネージ、ポスター、フライヤーは捉え方を変えると「窓」です。それが無数に街に配置されたときに、既存の景観を害さず、心地よい状況を生み出すために、青空をテーマにしたビジュアルを展開しています。
人の目を強く引くような広告がファーストリリースには求められがちですが、あえてそこを抑えて、ノイズレスな広告を展開できたことは、東急様のスローガンにある「美しい時代をつくる」に通ずる部分があります。ここで初めて「自分がやってきたことは、ものづくりではなくまちづくりなんだ」と実感しました。
プロダクトに寄り添い続ける。
アイデアが深まる環境
デジタルプロダクトに関わっていて魅力的なことは、一度リリースして終わりではないことです。本プロジェクトは、非常に早いスピードでアップデートを繰り返しています。
街にある公園が住人の声によって、より過ごしやすい場所に改善されていくように、commonも利用者の声によって新機能追加・既存機能改善が進んでいき、単なるスマホアプリではなく、街のインフラの一つとして機能し始めています。
このような早いサイクルでアップデートを進められる理由は、アイデアを深めやすい環境にあります。フラーでは、ディレクターやエンジニアとの距離が非常に近く、いつでも相談できる組織体制が作られています。そのため、ふと思いついたアイデアを、気軽にディレクターさんに伝えてディスカッションしたり、エンジニアさんに実装可能かどうか仕様が曖昧な状態で聞いても検討してもらえたりと、アイデアを新鮮なうちに捌くことができます。これによって、些細なアイデアもプロダクトに取り込むことができ、細かな機能改善が進められると感じています。
特にcommonは街をテーマにしているため、自分自身も街で過ごしているとアイデアが溢れてくるので、そういったアイデアを気兼ねなく展開できることは、プロダクトにとってはもちろん、自分にとっても良い環境です。
未来を見据えながら作る。
プロダクトの細かい機能追加を繰り返し、着実にクオリティを上げることに加えて、数年後を見据えた検討も同時に進んでいます。
「この機能が発展していけば、こういった新しいコミュニケーションの形が生まれるのではないか」「こういった体験ができれば、もっと街が楽しくなるかもしれない」と、新しい街のあり方や、人々のコミュニケーションの新しい形を日々模索しています。
今ある機能を最大限作りあげることはもちろんですが、このようにプロダクトの未来も見据えながら作ることで、広い時間軸でプロジェクトに関われています。
ものづくりというスケールを超えたまちづくりに、街の一員であるデザイナーとして携わることで、commonと共に成長できたと感じています。
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