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「この子が大きくなった時に楽しんでくれるようなアプリに」自分ごとで考える、フラーのデザイナーのもの創り

dキッズ」は、NTTドコモが手がけるスマホ・タブレット向け知育サービスです。

2021年10月のアプリの全面リニューアルに当たり、フラーは企画立案から保護者と子どもそれぞれの体験設計、機能やデザインといったアプリの仕様策定まで、開発を除く幅広い業務でドコモと共創しました。

プロジェクトを進める中で、実際に企画やデザインを手掛けたフラーのメンバーはどのような思いをもって取り組んだのでしょうか。

「ヒトに寄り添うデジタルを、みんなの手元に。」をミッションに掲げるフラーで、デジタルパートナーとして実際にものづくりに取り組むメンバーがそれぞれのプロフェッショナル領域や興味関心をもとに綴りました。

3歳の娘と一緒に

小野田 洋幸(デザイナー)
プロフィール:新潟県出身。ベンチャー企業などを経て2012年に大手ネット企業に入社。アプリの新規開発を始めとした複数サービスに携わる。2020年フラーに入社。入社をきっかけに東京から故郷へUターンし、現在は新潟本社に勤務。

コンテンツとの出会いをつくる

「dキッズ」の特長は、なんといってもそのコンテンツの豊富さにあります。

たった一つのアプリの中に、アンパンマン、クレヨンしんちゃん、機関車トーマス、しまじろう、ドラえもんなどなど…さながら「キッズアプリ界のアベンジャーズ」とでも言うべき有名キャラクターたちが大集結。様々な知育ゲームで楽しみながら読み書き、算数、英語、プログラミングなどを学ぶことができます。

内容の充実度や金額面でのお得さにおいては、子ども向け知育アプリの中でもトップクラスと言えるのではないでしょうか。

しかしこれまでのアプリでは、その豊富なコンテンツをユーザーである子どもに対してちゃんと届けられていないのではないかと、リニューアルに当たって私たちは考えました。

そこで私たちは最初のアクションとして、既存の画面遷移を図に起こして整理し、徹底的にサービス全体を理解するところから始めました。

「なぜそうなっているか」を突き詰めて考える

リニューアル前のアプリの画面遷移図の一部。分岐も多く実際はこの数倍の遷移図になりました

今回の我々のミッションは既存アプリのリニューアルです。

ユーザー体験のために導線を変更するかどうかは「既存の導線がなぜそうなっているのか」を理解した上で判断する必要がありました。

既存の導線は、言わば「dキッズ」が積み重ねてきた歴史の賜物であり、そこには理由が必ず存在します。

実際に一見不要に見える機能や導線も、クライアントへ確認すると、サービスとしてとても重要なものであるケースがほとんどでした。

より良いユーザー体験を実現させたいという思いはあったものの、そういった事情も踏まえて、導線の変更には慎重にならざるを得ませんでした。

同時に、「dキッズ」というアプリ単体ではなく、ドコモが提供するいわゆる「d系サービス」としての視点も持ち合わせておく必要がありました。

このように多面的な視点を持ってサービスの改修について検討する必要があったため、動線設計は我々が当初想定していた以上にハードな作業でした。

しかし、この調査に膨大な時間をかけたことにより、どういった点に課題があるのか、それを改修するためにはどこに気をつけなければならないのかを、メンバー間で共有することができました。

キッズ向けアプリのユーザーは誰か?

今回、フラーが定義した課題の一つとして「アプリ内で親と子どもの体験が混在している」という点がありました。

子ども向けの知育アプリである「dキッズ」のユーザーは子どもだけ。ついそんなふうに考えてしまいがちですが、実際はそうではありません。

ユーザーである子どもとアプリの間には保護者が常に介在しています。

リニューアル前の「dキッズ」では、子どもがゲームを選択する画面上に、保護者でないと読み取れないようなテキストが入ったキャンペーンバナーが配置されるなど、保護者向けの情報と子ども向けの情報が入り混じっていて、子どもが思うようにゲームを選択・操作できていないのではと考えました。

そこで「親と子どもの体験をはっきり分ける」という大きな方針を立てました。

画面デザインは開発当時のもの

子ども向けの画面においては、子どもが自分のやりたいものをより見つけやすくなり、キャンペーン情報などはより保護者に対して届けやすくなると考えたのです。

「この画面は親が使う画面なのか子どもが使う画面なのか?はたまた両方が見る画面なのか」という問いに向き合いながら画面の検討を進めました。

新たに設けたタイトル画面

この方針に沿って進めるにあたり、これまでの「dキッズ」には存在しなかった「タイトル画面」を新たに設けることにしました。

タイトル画面は親から子どもへ端末を手渡すという利用シーンを想定し「保護者と子ども両方が見る画面」と定義することで、保護者向けのバナー情報や各種設定画面へのリンクと子どもがゲームを見つけるための子ども用画面へのリンクである「あそぶ」ボタンが共存する画面としたのです。

タイトル画面においては子どもと保護者、両者の利用シーンが混在してしまいますが、「あそぶ」ボタン以降ははっきりと「子ども向けの体験」へと分岐させます。

こうすることで「親が端末を渡しても子どもがスムーズに遊べる」体験を実現しようと試みました。

親はアプリを起ち上げてから子どもへと端末を渡すため、保護者向けの情報はタイトル画面にあれば目に留めてもらいやすくなります。

「あそぶ」ボタンのアニメーション

キャンペーン情報は子どもにとっても魅力的に見えるものも多いですが、そんな情報群の中でも子ども向け画面へと遷移する「あそぶ」ボタンをちゃんと選んでもらえるように、ボタンの配置と存在感に注意しました。

こういったアニメーションの面白さも、子どもの注意を引き付ける上で重要な部分であり、今回のアプリリニューアルでこだわったポイントとなっています。

子どものやりたい気持ちに答える

子ども向けの画面においてはとにかく「楽しく直感的に遊びたいものが選べる」ことを大切にしました。

これまでのアプリでは、テキスト情報がゲームの説明を担っている部分が多く、文字の読めない低年齢のユーザーにとってはノイズになっている可能性があると考えました。

上記の点を踏まえ、子ども用画面のゲーム一覧では情報を極力削ぎ落とし、「ゲーム名」と「画像」のみとしました。

ここで大切にしたポイントは「子どもに何を基準としてゲームを選択してもらうか」です。

前述のとおり、「dキッズ」には「キッズアプリ界のアベンジャーズ」とも言える有名キャラクターが多数揃っています。

もちろんそれは大きな魅力の一つではあるのですが、全てのゲームを並列に並べた場合、どうしてもキャラクターの強さが勝ってしまい、有名キャラクターのアイコンだけで選ばれてしまうという問題もありました。

有名キャラクターを用いてはいなくても、魅力的なコンテンツは多数あり、そういったゲームにも興味をもってもらえたら…

そんな思いもあり、キャラクター主体のアイコンよりも、実際にプレイしている画面をより大きく表示する方針にしました。

ユーザーはプレイ中の画面を見ることでどういったアプリなのかをより直感的に理解できるようになるのでは、と考えたのです。

ただし、特定のコンテンツで遊びたい、というユーザーのことも考える必要があるため、キャラクター主体のアイコンも小さく残すことにしました。

サービスの顔となったどうぶつアイコン

今回のリニューアルでは新たな機能がいくつか追加されたのですが、その中でも特に大きな変更点の一つが「どうぶつアイコン」の導入です。

これは子どもが自分のアイコンとして8種類のどうぶつキャラクターの中から好きなものを選択することができるという機能です。

既にアプリ内で様々なキャラクターを扱っている「dキッズ」において、独自のキャラクターを新たに設けることについては当然のことながら議論がありました。

しかし、「アプリに対してもっと愛着をもってもらう」ことが、「dキッズ」というアプリの価値を高める上で非常に重要と考え、導入を決定しました。
結果、キャラクターについては想定していた以上に好意的な反響をいただきました。

以前よりも複数アカウントでの利用が増え、家庭内で子どもたちが楽しく遊んでいる様子をデータから伺い知ることができました。

どうぶつアイコンはユーザーアイコンとして登場したものですが、大変好評をいただき、ノベルティグッズに登場したり、ローディングアニメーションにも使われたりと、少しづつアプリ内外での役割を拡げていっています。

ユーザーアイコンとして制作したキャラクターが、「dキッズ」を象徴するものへと成長していってくれたことをとてもうれしく感じています。

いつか娘が使うアプリに

私には3歳の娘がいるのですが、このプロジェクトに参加した当時の彼女はまだ1歳。

あまり積極的にスマートフォンには触らせていませんでした(もし仮に触れさせていたとしても何もできなかったと思います)。

「キッズ」どころか「ベビー」に近い娘を見ながらよく考えていたことは、「本当にこんな子どもが、いずれこのアプリで遊べるようになるものなんだろうか?」という疑問でした。

積み木一つを積むことすらままならないような彼女が、スマートフォンアプリで遊ぶ姿を、その時は上手くイメージすることができなかったのです。
ただ、とても良いタイミングで良いプロジェクトにアサインされたと感じていました。

この子がもう少し大きくなった時に楽しんでくれるようなアプリを作ろう、というのが私の目標になりました。

今では娘も立派な「dキッズ」ユーザーになり、ひとまず個人的な目標は達成できたことになります。

ちなみに、娘のお気に入りは「タッチ!あそベビー」で、週末の限られた時間のみのプレイ時間にも関わらず色々なことを学び、その知識を私に教えてくれ、驚かせてくれます。

そんな娘の得意げな表情は、私がこのサービスに関われたことの喜びをさらに強いものにしてくれます。

そして、同じように世界中の親子をつなぐ架け橋としての役割を「dキッズ」が担うことができたなら、こんなに嬉しいことはないと思います。

これからも「dキッズ」はアップデートを続けていきますのでお楽しみに!

【「d キッズ」は、株式会社NTT ドコモの商標または登録商標です。 】

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