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デザインと開発の責任者が考える、複数拠点における関係性構築とコミュニケーションの在り方 〜離れていても、まるで一緒の空間にいるような雰囲気を創り出す努力〜

リモート勤務の広がりにより、特にIT業界では、オフィスへ出社することがどんどん少なくなっています。
オンラインで繋がり、物理的に距離のある形でコミュニケーションを取って、ともに仕事をこなす。それは大きな可能性のある働き方である一方、課題も浮き彫りになってきています。

フラーは、コロナ禍以前より週一のリモート勤務を導入し、また、柏の葉ー新潟間での拠点間コミュニケーションも積極的に試行錯誤してきました。

改めて、現状ではどんな課題があり、どう解決を試みているのか。メンバーを統括する役割にある、フラー副社長兼CDOとフラースタジオ代表に、話を聞いてみました。

——簡単に、それぞれのフラーでの役割を教えてください。

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櫻井(副社長兼CDO):
取締役副社長兼CDOをしています櫻井です。
CDOとしては、フラーが出すプロダクトのデザインレビューやデザイナー陣の教育などを含め、デザイン全体の統括を担当しています。
また、副社長としては、フラーの価値観やみんなの働き方、会社全体の働きやすさなどについて、責任を持って考えています。

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伊津(フラースタジオ代表):
フラースタジオの統括をしている伊津です。
フラースタジオは、主にデザイナーとエンジニアとデータサイエンティストがいるチームで、開発部門と呼ばれることも多いです。ものを創ってアウトプットを出していくところですね。
そこで自分は、プロジェクトの推進と管理、そして組織の構築をしています。

——いわゆる管理職という立場から見て、コロナ禍になってフラーの働き方はどうなりましたか?

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櫻井(副社長兼CDO):
オフィスの立ち位置、果たす役割が変わったなと思います。
かつては物理的な出社をリモート勤務が補助していましたが、今はそれが逆になり、オンラインが主体です。
そしてオフィスは、仕事をする場所以上に、「みんなと会える」場所として機能を果たすようになりました。

オンラインでは目的がはっきりしないと通話をかけないので、必要な会話だけをしがちです。これはフラーだけじゃなく、世の中全体がそうかなと。昔より雑談は確実に減ったはず。
一方、オフィスに来れば、挨拶やさりげない会話があります。

フラーでは、昨年のコロナ禍初期よりずっと、毎日のリモート勤務が可能になっています。
緊急事態宣言などでもちろん状況は変わりますが、今は、一日あたり柏の葉オフィスでは80人中15〜20人ほどがオフィスに来ています。

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伊津(フラースタジオ代表):
コロナ禍によって、それまでは会社全体として動いていたところが、チームやプロジェクト、あるいは個人一人ひとりなど、より細かい単位で動く形になったなと感じています。
その方が仕事がやりやすいという人もいるので、これは良し悪しですね。
ただ事実として、会社全体一律でなにかコミュニケーションを図るのは、難しくなったなと思います。

勤務に関しては、一人でガッツリやりたいと考える人はリモートが、みんなと一緒にと思う人は出社が多めな印象です。
リモートだと、雑談するにもそのために予定取って始めるので、やはりそこは出社した方がやりやすいのかなと。

櫻井(副社長兼CDO):
だから、プライベートを含めて交流自体が少なくなったよね。
それを求めてか、今までより活発に部活で交流機会を作っているような様子も見ます。みんな、ちょっとコミュニケーションに飢えている部分はあるのかな。

——そういった現状に、課題があると感じますか?

伊津(フラースタジオ代表):
雑談が減ったので、一緒に仕事をする仲間がどういう人なのか、お互いにわかりにくくなってしまっています。そこに課題感は覚えますね。
仕事でのコミュニケーションは取るとしても、会って他愛もない話をする機会がないと、たとえば『相手の好きな食べ物』すら知らないままです。

櫻井(副社長兼CDO):
それで売り上げがこれくらい減ってしまう、なんてわかりやすい数値化は難しいけれど、でも影響は大きいよね。

一緒に『ものづくり』していくのだから、人となりをお互い知り合うことは大事です。そうすることで頼り合えるようになるし、会議での意見の出し合いもやりやすくなる。一般論として、相手に失礼にならないようにと考えると、よりコミュニケーションは慎重になりますよね。それ自体はもちろん良いことなんですが、ちょっと大変でもあります。
そこで、少しでもお互いに人となりを知り合う親しい間柄になっていれば、もっと気軽に言いたいことを言い合えるかなと。

伊津(フラースタジオ代表):
なので自分自身でも、オフィスに来ている人とは、昔よりも意識して雑談をしています。コロナ禍以前と違い、その人が次、またオフィスに来るとは限りませんから。
雑談の内容自体は本当に、他愛ないことですが。

櫻井(副社長兼CDO):
おすすめの漫画の話とか、お店とか、サービスとか。そういう、本当に他愛もない会話だよね。

伊津(フラースタジオ代表):
そうそう。でも、それでその人が何に興味を持っているかがわかる。
たとえば自分としては、新しい案件が来たとき、「この人どうかな」と判断する基準の一つとしても役に立っています。

——他に、リモート勤務主体になったからこその課題はありますか?

伊津(フラースタジオ代表):
さっきは雑談の話をしましたが、そういうプライベートな話題に限らず、チーム内での前提知識の共有などもしにくい印象です。
全員が全員出社しているわけではないので、出社派とリモート派で情報格差が出てしまっているときがあります。

櫻井(副社長兼CDO):
僕もまさに同じことを感じるな……。
出社すると、さりげなく話している情報に触れられます。会議体じゃなくても、なんとなくそういうことを聞いておくのって大事です。
オンライン上だと、それがなかなか拾えないんですよね。だから、勤務形態によって情報ギャップが出ているなと感じます。

伊津(フラースタジオ代表):
それから、オンラインのやりとりだけだと、みんなが普段どんな生活をしているかをなんとなく察することも難しいです。

そうなると、たとえば「体調を崩したので休みます」というメンバーに対して、どんなことがあったのかなと想像することができません。もちろん理由を深くは聞けませんし明かさなくていいことなんですが、それを受けるこちらとしては、できる限り想定しておいて、サポートできるところはしていきたいという気持ちがあります。

メンバー同士の関係性もわかりにくくなりましたね。誰と誰がよく話している、みたいな。
また、メンバーからは、「話したことのない人が増えてくると、ひさしぶりに来たオフィスが見たことのない顔ばかりで別の会社みたいに感じる」なんて声もあります。

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櫻井(副社長兼CDO):
そんな中、普段のオフィスの様子をslackで投稿してくれるメンバーもいて、すごくありがたいですね。そういう、ある種の見える化の工夫もこれからは大事になってきます。
リモートでも、会社に居るんだなという「手触り感」はありますし、それは大切なことです。
だから、内部広報の重要性はこれからもっと上がってくるなと。

フラーの価値観の一つ「人の和を大切にすること」は、人となりを知ってこそ初めて生まれるものです。
みんなには、タッチポイントの一つとして、ぜひオフィスをより使いこなしてほしいなあと願っています。自分も、そのためにできることを考えて実行していきたいです。もちろん、みんなからの意見もどんどん取り入れながら。

——フラーには現在、柏の葉本社、新潟本社、長岡サテライトオフィス、沖縄サテライトオフィスがあります。それぞれのオフィス内だけでなく、それら拠点間のコミュニケーションについてはどうですか?

伊津(フラースタジオ代表):
コロナ禍前から、細かいところでさまざまな工夫はしてきました。
新潟本社がまだ、本社どころか支社にもなっていなかったころは、まずはなるべく、柏の葉本社のみんなに新潟のことを知ってもらうことを念頭に置いていましたね。

新潟の様子をこまめに写真入りでslackに投稿してみたり、zoomするときは、本題に入る前にオフィスや外の風景などをちょっと映してみたり。
そうやって、言葉では伝えきれない雰囲気を伝える工夫を、色々としてきました。

櫻井(副社長兼CDO):
それから、より良い拠点間コミュニケーションをと思ったときに大切なのは、矛盾しているようですが、拠点の違いを意識しないということかなと。
こういう仕事はこっちのオフィスのメンバーだけしかできなくて……なんて考えは、フラーにはありません。フラーでは普段からみんな、お互いがどこの拠点所属だとかを、あまり意識していないんです。
だからもちろん、拠点間に差なんて作らない。それは、フラーがとても大切にしていることです。

また、伊津が言ってくれたような細かい工夫の話をすると、複数オフィス体制になった初期から、『常時繋ぎっぱなしの拠点間モニター』を用意していたことはよかったなと思います。お互いのオフィスの様子が見える形のモニターを、常に起動しておくという。
なんか繋がっている感じ、というのはすごく大事なんだなと実感できました。

伊津(フラースタジオ代表):
僕も、拠点間モニターはかなり良い役割を果たしてくれているなと思います。

ただ、もちろん課題もありました。
それぞれのオフィスの様子を映すこと自体はできていたんですが、コミュニケーションには使いにくかったなと。
カメラで映せる範囲が狭かったり、すごく近寄らないと話せなかったりで、なかなかコミュニケーションは取りにくいというか……。

櫻井(副社長兼CDO):
相当強い意識がないと、あれを双方向のコミュニケーションに使うのは難しいよね。
なんとなくで会話が始まる、なんて使い方はできなかったな。

伊津(フラースタジオ代表):
相手の姿も縮小表示だから、画面の中に写ってる感も出てしまうし。

櫻井(副社長兼CDO):
なので、絶対により大きなモニターが良いとは確信していましたね。実際、小さいモニターから始めて、徐々に大きくはしていました。

——そんな中、フラーでは拠点間モニターの新たな形として、インタラクティビジョンを導入しました。こちらについてはいかがですか?

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伊津(フラースタジオ代表):
インタラクティビジョンは、アプリ開発でご一緒しているスノーピークさんのグループ会社であるスノーピークビジネスソリューションズ(SPBS)の商品で、岡崎にあるSPBSさんの本社で実物を見てから、「これは良いなあ」と思っていたんです。

それで実際に導入させていただき、今、3ヶ月ほどが経ちました。
まず実感しているのは、普通の大型モニターを置いているだけだった頃と比べて、あまり意識しなくてもお互いの様子がわかるようになったこと。
人が等身大で表示されるので単純に臨場感が違いますし、オフィスを映せる画角自体も広い。

おかげで『向こうのオフィスがそこにある感じ』が、ずっと強くなりましたね。
だからか、インタラクティビジョンの前を通るたびにお互いの様子をちらっと見て、手を振ってみたりとか、そういうシーンをよく見ます。

櫻井(副社長兼CDO):
コミュニケーションを取り合うためにモニターが繋がっている、というのとは、レベルの違った良さがあるなと感じています。
臨場感のあるインタラクティビジョンでは、たとえ声をかける、会話をするということをしなくても、お互いが作業を頑張っている様子が、意識せずとも目に映ります。
時間にしたら一秒くらいのことではあっても、それだけで、お互いのオフィスの存在をすごく自然に感じることができる。
離れたオフィス同士がまた一歩、近い存在になったなと思っています。

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伊津(フラースタジオ代表):
自然に向こうのオフィスの様子が目に映るというのは、本当に日々実感しています。
「あ、この人髪染めたんだ」とかもわかったり。それで何かがどうこうということはないんですけど、そういった生の情報を自然に知れることは、大きいことだと思います。

櫻井(副社長兼CDO):
空間として繋がっている感が出てくれたよね。オフィス同士の境目がグッと薄くなった気がする。お互いの姿に等身大のサイズがあるというのは、やっぱり効果的ですね。

お互いの様子をさっとチェックして「今時間あるかな? 声かけて大丈夫かな?」と確認することなんかもあったり。

伊津(フラースタジオ代表):
実際、インタラクティビジョンなら、そのままお互いに話すこともできます。単にモニターで繋いでいた頃より、かなり気軽に会話できるようになりました。
気軽に話せすぎて、そこでガッツリ話してしまうことも……(笑)

——最後に、フラーのリモート勤務やオフィスのあり方について、これからのことを教えてください。

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櫻井(副社長兼CDO):
フラーは「ヒト」を大切にする会社です。なので、オフィスを無くすことは選択肢としては絶対にありえません。

出社もリモート勤務も、それぞれに大きな価値があります。
一緒に会社をやっている仲間である限り、お互いに触れ合えるタッチポイントが多いに越したことはないかなと。リモートを含めた仕事の会議、オフィスでの雑談、部活などなど……フラーらしい形で、それらを増やしていきたいなと思っています。

もちろんこれは、「絶対にオフィスに来るように」なんて話ではないです。「みんなの顔を見に行こうかな」みたいな気持ちで、あくまでタッチポイントの一つとしてオフィスを使ってほしい。「オフィスの漫画読みに行こうかな」とかでも全然オッケーです。
一緒に、より良いタッチポイントのあり方と使い方を、メンバーみんなで探っていきたいです。

伊津(フラースタジオ代表):
対面で話をすることは、これからもコミュニケーションの基本であり続けると思っています。
ただ、それが必ずしも会社のオフィスだけである必要はないかなと。櫻井からタッチポイントを増やすという話もありましたが、極端に言えば、食堂とかレストランもオフィスの一つと考え、新しいタッチポイントと捉えてもいい。

もちろん、人によっては自宅で作業する形がベストだという人もいる。それをダメだとかいうつもりもありません。
コロナ禍で難しい状況ではあるんですが、みんなが働きやすいようにしたいと常に思っています。
オフィスへ行きたいけど行きにくいという人にも合わせて、オフィスっぽいコミュニケーションが取れるツールも試してみてもいます。新しい挑戦はどんどんしていけたらなと。
メンバーのみんなの意見を取り入れて、それぞれにとって最適な形を探し続けていきたいです。

(文章:平山、写真:島、インタビュー:川野)


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