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飽和する2023年のアプリ市場で企業がデジタルの価値を発揮するには?フラーの専門家が語る

2022年はアプリやデジタルにとってどんな年だったのでしょうか。これからデジタルやアプリを取り入れようとする企業はどんなことに気をつければ良いのでしょうか。

アプリに造詣が深いフラーのデジタルパートナー事業責任者の林が2023年の展望とともに語りました。

フラー株式会社
執行役員デジタルパートナーグループ長 林 浩之(はやし・ひろゆき)
プロフィール:1991年生。愛知県出身。同志社大学在学中にITベンチャーを創業。同社を6年間経営し、BtoCプロダクトを複数展開。事業立ち上げから拡大までの全行程を担当し、事業を売却。その後株式会社ドワンゴに入社、月額制コミュニティサービスの運営に携わりアプリチームの統括リーダーとして2年在籍。2018年8月フラーに参画し開発する全アプリの戦略を担当、組織拡大にも貢献。2020年7月には執行役員カスタマーサクセスグループ長に就任し、現在は執行役員デジタルパートナーグループ長。ユメは世の中の「あたりまえ」を少しでも変革すること。

アプリ市場自体は飽和を迎えている

2022年はアプリ市場が飽和状態を迎えていると感じた1年でした。言い換えると、人々にとって一番身近なデジタルデバイスがスマホという事実は変わらないのですが、その中にあるアプリの利用については、固定化がより顕著になったということです。

フラーが手がけるアプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」の月間利用者数(MAU)ランキング上位アプリ500個のうち、2021年12月と2022年12月の2年連続でランク入りしたアプリは445アプリと9割を占めました。

この事実は一定のアプリ利用の固定化・飽和を示しているとの見方もできるでしょう。

4、5年前であれば「こんなサービスまだなかったよね」とか、「この領域はこんな攻め方をしたら面白いかも」といったアイディアで勝負できる“余白”がいくつも存在していたように思います。

ただ、スマホアプリというものが世の中に登場して10年以上が経過し、全世界でそういった余白や攻められる領域に世界中の人たちがアプローチすると、さすがに大小問わずほとんどの領域でさまざまな試行が終了した状態になります。

そうなると、プラットフォームの大小を問わず既に存在しているアプリによる各カテゴリーのシェアが固定化します。

動画やコミックなど固定化とは無縁の領域もありましたが、全体としては飽和状態で大きな変化が起きにくかったのがこの1年だったと思います。

試行の時が過ぎ、失敗できないデジタル投資

一方、企業のデジタル領域における取り組みという観点では、新型コロナウイルスの影響が顕在化して以降のこの2年間、大きな混乱があらゆるところで生じました。あらゆる企業の事業領域でデジタルの緊急性が増したのです。デジタルトランスフォーメーションという言葉も一気に広がりました。

実際、2022年12月のApp ApeのMAUランキング上位アプリ500個のうち、実店舗を有し、リアルな商品の販売やサービスの提供を主な事業とする“非アプリ専業”の企業が手がけるアプリの数は95個で、前年同月に比べ19個増えました。

急激に早まったデジタルの波です。当然のことながら、多くの会社がデジタルの使い方が分からないので、試行錯誤の中でデジタルに対し大量の資本を投下したと思います。

その結果、機能が不完全だったりユーザーに寄り添っていなかったりといった事例もたくさん生まれました。これは良し悪しではなくて、未知の事象に対する先行した取り組みの結果なので当たり前のことです。むしろ多くの企業がデジタルにトライした結果であり、素晴らしいことだと思っています。

2022年はIT事業会社ではない非IT企業がデジタルに引き続き手を伸ばし続けた1年だったのと同時に、試行錯誤やトライアル・アンド・エラーを繰り返してきた時間がようやく終わり、デジタルに対する見極めもできた年だったと思っています。

一方でデジタルの必要性自体は変わっていないはずですから、これまで2年間の学びを経て2023年は事業に着実に貢献する地に足のついたデジタル施策を求められる時代になるでしょう。

2023年はデジタルにより真面目に取り組むべき年に

繰り返しになりますが、2023年は、この2年でさまざまな試行錯誤をしてきた非IT企業がより真面目にアプリとデジタルに取り組む年になるのは間違いないと見ています。

この2年ほどの試行でさまざまな失敗や学びがあったはずですから、次はもう失敗できないですし、投資額も大きくなっていくでしょう。

各企業ともにこれまで以上に費用対効果を意識することになります。それは、単純に費用を抑えるということではなく、費用をかけた分だけしっかり事業に貢献できる形を整えるという意味でもあります。

これまでデジタルに関するさまざまな支援や伴走を手がけてきた経験からも、非IT企業にはそれぞれの事業や業態に応じた、アプリやデジタルを活用して勝てるルートがあると確信しています。

店舗や会員、ブランド、商品など、非IT企業でもこれまでに事業を支え続けてきた資産があるはずです。デジタル施策は全てデジタルで行わなければいけないわけでもありません。非IT企業は今こそ築き上げてきた資産を活用したデジタル施策に乗り出すべきです。

店舗などに一度に1万人を集めるのは難しいかもしれませんが、アプリに集まるのはそれほど難しいことではありません。店舗などが閉まっている時間帯もアプリを介して顧客と接点を持ち続けることもできます。

今あるアセットとデジタルと適切に組み合わせて起爆剤にしたり、顧客の満足度を高めていくというアプリの使い方をそれぞれの事業に合わせて整えていくことで、事業の圧倒的な成長を見込める状況は、今年も変わらないでしょう。

アプリ・デジタルを事業に生かすのに重要なマインドと実践とは

2023年の人々の可処分時間は、正直、使い切るギリギリまで来ています。フラーが取りまとめているアプリ利用を取り巻くさまざまなデータを紹介する「アプリ市場白書」によると、2021年の日本人1人当たりの日間平均アプリ利用時間は平均4.8時間で、2020年に比べ0.2時間増という結果になりました。過去最長となったものの、他の生活に必要な時間を考慮するとこれはもうほぼ横ばいに近い状態です。朝起きてから夜寝るまでの間の「時間の奪い合い」は限界まで繰り広げられていると言ってもいいでしょう。

圧倒的なユーザー数を誇るTwitterですら苦戦している中、人々の可処分時間を奪い合ってアプリに人が集めればマネタイズがついてくるという時代は終わりを迎えたと思います。

では、2023年の非IT企業のアプリはどこを目指したらいいのでしょうか?

まず念頭に置くべきなのが、巨大プラットフォーマーによって既に埋められているユーザーの可処分時間を奪い取りに行くのではなく、特定のアクションや特定のシーンにおいて使ってもらうことです。

これまでは”空いてる時間に使ってもらえるように”を意識した時代でしたが、これからは”◯◯をする時はこのアプリ”といった具合に特定のシーンにおいて確実にユーザーを獲得する時代です。生活の中の特定の点で確実に使ってもらうアプリ設計が求められます。

例えばマクドナルドのモバイルオーダーはマクドナルドを利用するあの瞬間だけ使うアプリです。それでも十分にユーザーのニーズを満たし、ユーザーの利便性を高め、果てには店舗運営の省力化や効率化につなげるという恐ろしいほどの効果を発揮しています。

「オートバックス」というカー用品店のアプリは、車検やタイヤ交換といったカーメンテナンスに関する情報をアプリに収め、ユーザーが適切なタイミングで車のメンテナンスを実施するのを手助けしてくれます。

トータルの時間は短くても、その人の生活や営みに必ず必要なアプリだったり、局所的だけど確実に使われるアプリやデジタルサービスが重要になってくるのは必然だと思います。

これらを実現するためにも、自らの事業の強みや売りをまず徹底的に分析・理解し、デジタルが加速剤となるポイントを見定めるためのビジョン、戦略を丁寧にすり合わせて描くということに尽きます。

アプリの恩恵を被るステークホルダーが誰なのか、それは内と外にどれくらいいるのか、実際に事業にどれくらいのインパクトを与えられるのか、そういった丁寧な思考と戦略を積み重ねていくことが非IT企業には求められるでしょう。

一連の積み重ねが既存事業・既存資産を最大限活かしたデジタル戦略となるはずですし、非IT企業がIT企業に勝るにはそういった思考が不可欠です。

デジタル人材育成は“伴走型”が最短ルート

このようにデジタルの本領発揮が期待される中、デジタル人材の確保と育成は2023年、ますます大きな課題になっていくでしょう。スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2022年秋に発表したデジタル競争力ランキングによると、日本は29位と先進国の中でも最下位でした。日本はいま、“デジタル後進国”なのです。

そこで日本をデジタル後進国から引き上げる鍵を握るのが、デジタルを支援するクライアントワークを手がける企業です。

多くの企業にとって、内部の人材育成やリスキリングだけではデジタルを生かした事業の成功が難しい状況だと思います。

採用や育成のロードマップを敷き、最初の1人目のデジタル人材を獲得したとしても、その人材が育ち、事業の成功につながるまでは10年単位のプロジェクトになるでしょう。その10年の間にさまざまなテクノロジーの進化も生じるわけです。

すでにデジタルのモノ創りに精通している外の力を積極的に使えば、結果として社内にノウハウが残り、人材が育ち、適切なテクノロジーの進化に柔軟に対応できるようになると思います。

そういう意味で、フラーをはじめとするクライアントワークを手がける企業と付き合いながら自社のデジタル人材育成を進めていくのが最短ルートなのです。

変わらず課題に丁寧に向き合う

フラーはパートナーの課題に丁寧に向き合い、事業の貢献に愚直に向き合っています。これからデジタルがさらなる発展を遂げたとしても、その芯の部分は変わらないと確信しています。

さまざまなテクノロジーをキャッチアップしながら、それぞれの企業の事業の成功に向けた戦い方を導き出し、デジタルのあらゆる場面で伴走していくのが2023年のフラーの役目となるのは間違いないでしょう。

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