App Apeはヒトとデータをつなぐ"アクショナブルなインサイト”を導き出す 前編:スマホニーズとデータの役割の変化
フラーが手掛けるアプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」は、前身の「Ape Ape Analytics」がサービスを開始してから現在に至るまで、8年以上成長し続けてきました。
その歴史は、スマートフォン(スマホ)の進化や人々や企業がスマホに求める役割、そしてデータへのニーズの変化を反映したものとも言えます。
フラーのデジタルパートナー事業の重要な位置を占める、データ分析基盤としてのApp Apeの役割はどのように変遷してきたのでしょうか。そして今、どんな価値を提供しているのでしょうか。App Apeの責任者2人に聞きました。
前編はApp Apeの歴史と利用するお客様の特徴について語ります。
(記事・写真:日影耕造)
エクセルデータから始まったApp Apeの歴史
ーーApp Apeの歴史について教えてください。
大野:2013年にサービスを開始した当初のApp Apeは、ユーザーから許諾を受けて蓄積するスマホアプリの実利用の推計データを、Excelデータにてレポート形式で提供するサービスでした。
その時点では、現在のダッシュボードの主要機能であるアプリの「競合分析」の市場自体がそもそも世の中に定着していませんでした。
「競合分析ができるエクセルデータがある」と説明しても、理解してくれる企業自体がほとんどなかったという散々な状況でした。
データの読み解き方も必要性も理解してもらえない、そんな最初期から大きく状況が変わったきっかけは、2014年に開始したApp Apeのウェブ上でのダッシュボード提供でした。
ダッシュボードの開発によってデータが可視化されて捉えやすくなったことで、「データはこうやって使えばいいのだ」という部分がお客様に視覚的にスッと入ってくるようになったのです。
そこから「うちでも競合分析をやってみよう」という企業が一気に増えて、実際にApp Apeのデータやサービスを導入してくれるお客様が増えてきました。
App Apeのダッシュボードを開発した当時は、スマホゲームがコンシューマーゲームに対抗する一大勢力となり、スマホゲームがかなり伸びてきてる時期でした。また、TwitterやFacebook、InstagramといったSNSの存在感も社会の中で急速に高まっていきました。
それだけに、App Apeを導入するお客様もゲームデベロッパーやSNS運営企業が多かったですね。基本的にデータの扱いに慣れていて、自社のデータ分析を土台に、他社との比較や分析のニーズがあるお客さんでした。
自社では把握できない他社の様子を知りたいから、通常は手に入らない競合他社に関するデータを提供してくれるサービスとしてApp Apeを使うというのが、多くのお客様の立場でした。
2014年から2018年の終わりごろまではそのようなニーズを満たすため、フラーはApp Apeの開発や営業、他社との協業を進めてきました。
アプリや事業の成功へカスタマーサクセスが重要に
次に状況が変わってきたのが、2019年前後のタイミングです。具体的には、アプリでの収益が主目的ではないお客様がこの時期一気に増加しました。
スマホが幅広い年代に普及し、生活に欠かせないインフラとして急速にプレゼンスが高まっていく中、ゲーム以外にも人々の様々なニーズに対応したアプリが増えてきました。
OMO(Online Merges with Offline)などの言葉が流行ったように、顧客接点の創出という観点でアプリが企業にとって必須となった結果、他社はおろか自社のデータ分析もこれから着手していく段階のお客様もこの時期に散見されるようになってきました。
競合を含む他社に関する精緻なデータを提供することに加えて、そもそもデータをどのように分析してアプリや事業の成功につなげるのかといったノウハウやデジタルに関する戦略を提供する「カスタマーサクセス」を必要とする企業の導入が19年ごろから急速に拡大し、現在に至るまでその傾向が続いています。
具体的には、老若男女にスマホが普及しインフラ化をしていく中で、生活や消費、経済活動により密着したアプリでの収益が主目的ではないお客様から「データ分析をやったことがないがデータから示唆が欲しい」といったニーズが生まれています。
数値、グラフといったデータからアクションに繋げるというのは極めて難易度が高いです。データは重大な意思決定に繋がることも多く「データの読み解き」の重要性が市場全体として増していく中、カスタマーサクセスというデータを読み解き、適切なアクションに導く役割の重要性が高まっている形です。
時代の要請に応じて精緻なデータを提供することはもちろんなのですが、カスタマーサクセスの重要性の高まりとともに、データをどう分析をして、それぞれの企業の未来につなげるかといった「分析の方法論」の部分も一緒にサービスとして提供しているのがまさに現在地です。
このように、App Apeの歴史はまさに「スマホニーズの変化の歴史」とも言えます。
コロナの影響でデータへのニーズさらに
三輪:さらにこの1、2年のアプリを取り巻く大きな変化は、何と言っても新型コロナウイルスの影響です。消費者のアプリを取り巻く行動が大きく変わりました。
コロナの影響の長期化で巣篭もり・インドア志向が高まり、「Zoom」に代表されるようなテレビ会議サービス、可処分時間の仕向け先としてのコミック系アプリや動画系アプリなど、生活様式の変容に伴う需要を満たすアプリに関心を持つようになりました。
特に、飲食店のデリバリーへの注力など「リアル体験のデジタル化」が活発化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)へと繋がっているのが大きな変化だと思います。
そのような状況下で、「データの価値」もより一層高まっています。「店舗で接客していた飲食店が店舗よりもデリバリーを大事にしなきゃいけない」といった具合に、これまで経験のないことに取り組む必要に事業者は直面しているのです。
そこで、既存の事業者がどのように成長してきたのか、どこでどのような戦略判断をしてきたのかといった次の行動につながる示唆を、難しい意思決定を迫られた事業者にデータを通じて提供し支援することが、フラーがApp Apeを通じてお手伝いしていくべき領域だと思っています。
毎年発行している「アプリ市場白書」も、コロナやDXを含む社会の大きな変化や流れをデータでとらえ、幅広く活用いただくことを念頭に置いています。
ーーこの1年のコロナの影響は大きいですね。
三輪:そこがまさにデータへの関心が高まっている理由の一つだと思います。データをわかる人が分析するだけではなくて、あらゆる産業の人たちが、経験したことのない領域に対し、データから示唆を得ながら自分たちが進む方向性などを見出していかないといけない時代が到来しています。
これまで経験したことないことに取り組んでいかなければいけないわけですから、そこから得られた示唆を含めて、さまざまなデータや知見を複線で見ながら前に進むことを、ビジネスの現場に近い身近な場面でも求められる時代になっています。
これは市場データの文脈のお話ですが、戦略や施策で「何が正しそうなのか」といったファンダメンタルな判断について、他社が実際に同様の取り組みを行った結果を見て、アレンジしたり改善したりして自社に取り入れるため、データを一つの判断軸として使うというやり方はすごく増えてきていると感じています。
App Apeを利用するお客様の特徴とは
ーー現在のApp Apeを利用するお客様は、どのように分類できますか?
三輪:大きく分けて4つに分類できます。
まず1つ目は“アプリ内課金”などアプリそのものから収益を生み出すアプリ専業のお客様です。ゲームやコミック、マッチングといったアプリのデベロッパーに利用いただいています。
2つ目は、例えばECや飲食、小売など主となる事業があって、その「付加価値」としてアプリを提供するお客様です。
3つ目は、アプリを持つ企業を支援する広告代理店やコンサルティング会社のお客様です。
そして4つ目は投資の意思決定にデータを活用する投資関連会社のお客様です。
ーー4つの区分の割合はこの数年でどのように変化しているのでしょうか?
三輪:2つ目の主となる事業の「付加価値」としてアプリを提供するお客様がかなり増えました。具体的には、新型コロナウイルスの影響が顕在化する以前の2019年に比べ2倍になりました。
広告代理店やコンサルティングのお客様も増加傾向にあります。
ーーお客様に対してフラーが特に注力すべきことは何だとお考えでしょうか?
三輪:「カスタマーサクセス」にこれまで以上に力を入れていくことが大きなポイントになります。
これまでは、ツールやデータそのものに価値を感じてApp Apeをご導入いただくお客様がすごく多かったですし、実際に今も数多くいらっしゃいます。
一方、そもそも何のためにデータを使うのか、自分たちの事業でなぜデータを使うと得なのかといった疑問を解消していく「カスタマーアウトカム」のような考え方がすごく重要視されていることも、現場でお客様と接する中でひしひしと感じています。
データを提供するだけではなくて、その分析や読み解き、その結果から得られるアクションといったところまでをしっかりとお客様に寄り添い、価値を感じてもらえるようにご支援をする体制が重要だと思っています。
大野:お客様に寄り添い、価値を出せるウェブサービスとしてどのような指標や視点が必要で、そのために元のデータであるRAWデータはどういう基準で整備すべきなのかがどんどん決まっていくと思うんですね。
「施策」という一番人間に近くてアクションにつながりやすいものを見出すために、一番コンピューターに近いRAWデータから私達は整えていきます。
そのようなニーズに的確に応えていくため、直近では「示唆やアクショナブルなインサイトを得るための分析フロー」を土台に、データの整備・設計を体系化しました。
よりお客さんの価値に近い開発が実現できていると考えています。
(後編に続く)