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選択肢を増やして可能性を創る。アプリをイチから創るために大切にしたいこと 〜うちれぴディレクター前編〜

フラーはデジタルパートナー事業に取り組んでいます。
アプリやウェブに関わる支援を通じ、“ヒトに寄り添うデジタル”をパートナーと共に創り、未来を育む事業です。

数々の取り組みの中で、今回取り上げるのはサッポロホールディングスの新たなサービスのスマホアプリ『うちれぴ』のプロジェクト。

これまでの取り組みの中でフラーのメンバーはどのような思いで、どのようなことに取り組んできたのでしょうか。ディレクション、開発、デザインを担当したメンバーそれぞれが「うちれぴ」のプロジェクトを振り返りながら思いを綴りました。

今回の書き手はディレクションを担当した伊藤さんです。この記事では前編として『うちれぴ』のプロジェクトでの具体的なフェーズや新規事業への思いを、続く後編ではフラーのディレクターとしての役割についてお伝えします。

伊藤 裕一(いとう ゆういち)
ITサービス開発会社にてプロジェクトマネージャー・エンジニアとして大手通信会社アプリ開発などを担当。ジモティー入社後にディレクターに転向し、ディレクターグループの責任者としてサービスのグロースを担当した後、2019年にフラーに参加。現在は複数クライアントのデジタル戦略推進をサポートしつつ、サービスの開発やグロースに従事。


『うちれぴ』に込めた思いとは

うちれぴは「ごはん作りって、がんばらなくて良いらしい」をキャッチコピーとして掲げ、毎日の食体験を楽しく豊かなものにしていくという目的で作られたスマホアプリです。

時間がないときにパッとレシピを選び、夜ごはんの献立を作れる「今日のごはん」、家族からの評判が良かったレシピにタグ付けしてすぐに選べるようにしておく「殿堂入り」など、使っていくうちにごはん選びが楽になるレシピサービスです。食品メーカー様を始めとした30社近くの企業様より約2万件のレシピを掲載させていただいてます。

献立決めから買い物・片付け、さらに家族を巻き込んでいくような仕組みなど、レシピを軸にしつつも食を中心とした体験全般を事業スコープにしているところにサッポロホールディングス様の経営理念「潤いを創造し 豊かさに貢献する」や「うちれぴ」チームの思いが込められているサービスだと思います。

家庭における「ごはん作り」は「何を作るか」の検討はもちろん「食材の準備」「調理」「食事」「片付け」までがセットになっており、さらには日々の連続性を前提としている非常に複雑な体験となっています。その上「家族(特に子ども)の好み」や「その日の気分」「栄養面」までも加味して毎日をやりくりするのですから、まさに途方もない家事なわけです。

そんな「ごはん作り」に対して(女性に偏りがちであるという社会課題はありつつもまずは)「アプリでサポートして負担を少なくすることができるのではないか」という思いで始まったのが「うちれぴ」なのです。

うちれぴ発足の経緯

うちれぴはサッポロホールディングスの新規事業ビジネスコンテストから始まりました。その後の経緯は以下の通りです。

  • 工場、知財と別々の職務だった2人が家族(パートナー)の家事負担に着想を得て企画

  • ビジネスコンテストで勝ち残り事業化挑戦権を得る

  • 1年ほどのβ版サービスを経て、2022年7月に正式版うちれぴアプリをローンチ

  • フラーはβ版のグロース支援から参画

▼参考記事

本プロジェクトにおける期待された役割

上の記事にもあるように、最初に聞いた課題は「事業化に向けて、サービスをどうやったら成長軌道に乗せられるか分からない」というものでした。

我々フラーはまさに、デジタル領域において「プロダクトの成長を実現するパートナー」として活動しており、これまで複数のクライアントとデジタルプロダクトを成長させてきた経験があります。そんなフラーでも事業まるごとをサポートしてきた経験は少なく、まさに総力を結成させて取り組むプロジェクトになるなとめちゃくちゃ熱くなりましたね。

サッポロ様からの期待は「ワンチームで新規事業の成功に向けて走る」ことであり、課題解決を主とするコンサルティング領域の枠組みを大きく越えて、この事業を通じて世の中を変えていくと言ったビジョナリーな次元でも同じ視点で臨むことを求められます。

戦略策定からアプリの改善や運営における関係者の調整、さらには販促イベントへの参加まで、スキルとして非常に幅広いものが必要になるので、複数人のディレクターで手分けして進めています。

具体的には以下のようなスキルです。

  • 事業戦略立案サポート

  • プロダクトのグロース戦略立案

  • クライアントや関係各社を含めたチーム構築

  • プロダクト分析、企画、開発管理、運用

  • PoC企画検討、開発管理

  • メーカー各社様との商談

  • リアルな場での販促支援

柏の葉のイベントに参加してうちれぴをPRするサッポロホールディングス様とフラーのうちれぴメンバー

一方で、大きな1つのプロジェクトのクライアントとフラーの中間に立ち、両プロジェクトのバランスをコントロールしていく楽しさもあります。クライアントに寄り添うフラーのディレクターだからこそどちらの視点からもプロダクトに携わることができる、とても貴重な体験です。

フェーズ毎に苦労したことや工夫したこと

このプロジェクトでは私はディレクターとして最初の提案から、ベータ版うちレピ(ベータ版時代のサービス名は少し違いました)のグロース、正式版うちれぴ開発に向けた企画〜開発、正式版ローンチ後のグロース、メーカー各社とのビジネス商談と、多岐に渡り携わってきました。

ここでは主なフェーズ毎にどんなことをしてきたかを少し紹介できればと思います。

ベータ版の戦略サポートフェーズ

参画初期はまず「プロジェクトの理解」と「短期グロース施策検討」、「市場理解」を同時に進めました。

なにはともあれプロジェクトの目的や状況、課題感を理解しないことには戦略は立てられません。なので早々に(時期的に人の多い場所は避けたかったので)弊社柏の葉オフィスまでご足労いただいての丸1日ワークショップを開催させていただき情報理解を図りました。

ワークショップでは改めて本プロジェクトの経緯を伺ったり、うちれぴ発足のきっかけとなった原体験、理想とする体験についてなど、色々なことを話して認識を合わせていきました。それまでにも何度かオンラインでお話はしていましたが、このときに一気に理解が深まり「自分ごと」に出来た気がします。蛇足ですが、やはりオフラインの場というのは非言語情報が豊富に存在し認識を合わせやすいですし、対面の場を作るのは円滑なコミュニケーションを継続していく上でもとても有効だと感じます。

状況の理解を深めつつ、「事業化に向けてのグロース」という喫緊の課題がありましたので並行して進めていました。時間的にも予算的にも制約が多く、施策を試し打ちして仮説検証して進める余裕はなかったため、ファネル分析を中心に改善ポイントを優先度付けしてマーケティングで解決するという方針に舵を切りました。

もう一つ初期フェーズにおいて重要なことは「市場理解」です。

中長期の戦略を検討する上では必須ですし、序盤でいかに市場の理解を深めるかが戦略を立てていく上での精度に繋がります。

うちれぴであれば「食体験」という領域でどのような取り組みや検証が為されているのかを調査したり、料理研究家の方の発信した情報を本や雑誌、SNSにブログなどなど読み漁ったり、海外でのフードテックの事例も取り込みつつ日本とは文化や思想の違いがありそうな部分を感じたり…。

自ら食体験を楽しむ様子。

このドメイン理解をちゃんとやらないとクライアントと肩並べて同じ視点で会話出来ないんですよね。言うのは簡単だけど難しい。フラーではそれをちゃんとやっていきます。

アプリ初期開発フェーズ

事業化が決まってからは急ピッチでアプリ開発に向けての準備を進める必要がありました。

このフェーズはデザイナーさんとエンジニアさんがそれこそ獅子奮迅の大活躍でしたが、ディレクターの動きとして時系列順に「ビジョン/ミッションの言語化」と「アプリ開発に向けた要件調整」の2つをお話しします。

まず「ビジョン/ミッションの言語化」について、「事業としてだれにどんな体験を届けたいか」をベータ版での気づきを踏まえて見直すところからスタートしました。冒頭で紹介した「ごはん作りって、がんばらなくて良いらしい」というキャッチフレーズもこのタイミングで制作しています。正式版のサービス名「うちれぴ」やそのロゴも同じタイミングですね。

事業としての軸となるものなのでしっかりとディスカッションしたい反面、プロダクトをローンチしてから検証の時間を少しでも多く取ることの重要性も理解していたので、最低限の時間を確保しての検討だったと思います。別の記事でも話していますが、ここでの検討を通してチームとしてぶれない軸を持つことが出来、様々な発信の場やアプリの機能検討、さらには実証実験での取り組みにも良い影響を与えていると思います。

ただ、どうしても開発の期間が押されてしまい、理想として描いたプロダクトの状態からかなり要件を落とさねばならなくなり、その調整が必要になったりもしました。そもそも開発期間に対して機能が盛りだくさんになってしまっていたのも問題で、もっと早く機能検討にエンジニアさんをアサイン出来ていればと反省しましたね。やりたいことに対して開発リソースが足りない状況はよくあることだと思いますが、この件があってからより一層「ほんとうにやる必要のある施策」を意識しています。

開発自体はチームメンバーの奮闘に助けられましたが、うちれぴ独自の苦労としてあったのが「レシピデータの調整」です。うちれぴではレシピの提供に協力して頂いている食品メーカーさんが30社近くいらっしゃるのですが、各社が作っているレシピデータは情報の持ち方や中身の形式などが異なります。ベータ版でうちれぴとしての統一規格はできていましたが、それを正式版へ持ってくるときに形式違いや内容の不備など色々あり、連携社数が多いからこその大変さを経験しました。

うちれぴ公式サイトより。(2023年7月時点のものです。)

グロースフェーズ(現在)

この記事を執筆している時点では正式版うちれぴのローンチから1年は経過していないのですが、プロダクトとしてより良くできる箇所や検証したいことが見えてきています。また、事業としてもやりたいことがたくさんあるのでそれこそ先述していることですが「どの施策の優先度を上げて検証していくか」を検討するのがとても重要なフェーズです。目先の数値改善はもちろん重要でありつつも、サービスが長きに渡り生き残れる中長期的な視点は常に意識しています。

そのために特に念頭に置いているのは「複数の他の施策に繋げられる施策かどうか」という観点です。ひとつの施策を行うことで10個のさらなる施策につなげられるようなものですね。例えばユーザーのアクションがひとつ可視化できるような施策であれば、プロダクト改善だけでなく食品メーカーさんとの取り組みにもつなげられます。

このように重要なのはプロダクトとビジネスをつなげて選択肢を増やせるように施策を考えること。選択肢を持っていないことにはチャンスをチャンスとして認識することすらできない可能性があるので、いまは選択肢をなるべく増やしてビジネスチャンスを逃さないようにしたいです。

ありがたいことに「うちれぴ」には協力していただいている食品メーカー様や企業様がたくさんいらっしゃったり、経産省の主催する実証実験にお声がけいただいたりと、いろいろな方に支えられて成長しています。選択肢の幅が広がり、できることが増えるのは本当にありがたいことです。

ステークホルダーが増えるという意味では複雑さが増す一方で、広がる可能性をうまくモノにできればうちれぴでしか作れない世界を作ることができるというチャレンジだと捉えています。これはうちれぴ担当の皆さんの熱い思いと人徳があればこそで、うちれぴ事業成長の要とも言えるかもしれません。

「新規事業」をサポートすることの難しさと楽しさ

やっぱり「事業」となると利益の話がセットでついてきます。それってデジタルプロダクトをグロースさせることよりさらに抽象度の高いスキルというか、深い検討が必要になるんですよね。とても難しいなと今まさに苦心しています笑

既に確立された事業を伸ばすための手段としてデジタルプロダクトを開発したり成長させたりする場合はユーザー像も見えているためスコープを定めやすいです。しかし事業を創り成長させるとなるとどんなユーザーにフォーカスするかから検討を進め、軌道修正もしつつの進行になるので本当に考えることが多いです。

ただ、「デジタルプロダクトを成長させるスキル」と「事業を成長させるスキル」は全く別の能力というよりは延長線上にあるように感じています。どちらも「いかに大きな課題を見つけ、それを効率的に解決する手段を実現できるか」という能力が必要なんですよね。うちれぴはまさにスタートアップみたいな状態なので事業を伸ばすための検討と検証を数多くまわすフェーズにあり、検討に速度が求められることも難しさを増しているように感じます。

速度を求めたときにクオリティが犠牲になることはよくあるのですが、フラーは「丁寧にクオリティを高める」ことを価値観としていることもありクオリティの高い状態を保ちたかったんです。試行錯誤のかいもあって、結果的にバランスの良いところに落ち着いたと思いますがこのへんはメンバーにも苦労をかけたと思います。

幸い、うちれぴチームには事業会社に所属していた経験のあるメンバーが(わたし含め)いたり、要所要所でブーストをかけて突貫作業をこなしてくれるような頼れるメンバーがいるのでとても助かっています。バランス取りつつやっていきたいですね。

サッポロホールディングス様との合宿のようす

一般に、デジタルプロダクトのスタートアップというとキラキラしていてスマートに仕事を進めるようなイメージがあると思いますが、事業となるとそうでもない部分がやっぱりあって、そういう部分も一緒になって進めているのでフラーとしては少し異質なプロジェクトではあります。

新規事業のプロジェクトって難しさも色々とありつつ、成長の可能性を一緒に追いかけることができるというのは本当にすばらしい体験で、クライアントとそういう関係を築いて仕事ができるのはフラーのディレクター職としての魅力かもしれません。

後編では、フラーのディレクターだからこそ求められている役割や見られるだろう未来について書いていきます。


▼後半へ続きます。


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