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Amazonプライム・ビデオ、WBC日本戦配信で過去最高の利用者数に エンタメ動画の成功“王道パターン”とは

アプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」によると、エンタメ動画系アプリの競争が激化する中、「Amazonプライム・ビデオ(アマプラ)」アプリが3月22日、過去最高の日間利用者数を記録しました。

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝戦、日本対アメリカの試合を無料配信したためです。

アマプラは強化試合を含む日本代表の全試合を全て無料で配信。決勝戦を含む日本戦の無料配信を行った大会期間中の利用者数は、前年同期を大きく上回りました。

注目度の高いスポーツイベントの無料配信がもたらすエンタメ動画系アプリのグロースの実態はどのような様相なのでしょうか。App Apeで蓄積するデータをもとに読み解きました。

日本戦の試合日に利用者急増

App Apeによると、大会期間中(2023年3月8日〜22日)のアマプラの平均日間利用者数(平均DAU)は、大会の直前1カ月(23年2月8日〜3月7日)の平均に比べ25.3%増となりました。

アマプラで試合配信があった日(4、7、9、10、11、12、16、20、21、22の各日、合計10試合)の平均は、大会直前の1カ月平均に比べ36.7%増となりました。

決勝の米国戦があった22日の日間利用者数は、大会直前の1カ月平均に比べ94.2%増となり、2018年11月にApp Apeで集計を開始して以来過去最高のDAUを記録しました(数値はすべてApp Ape推計、iOS・Android合算)。前日21日の準決勝メキシコ戦でも過去最高を更新しているので、2日連続で更新した形です。

一般的に、エンタメ動画配信系アプリは平日よりも休日に使用者が伸びる傾向にあります。

にもかかわらず平日に過去最高を記録したことについては、なんと言っても手元におさまるスマホアプリというデバイスで配信したことが大きいと見ています。すきま時間の「ながら見」などで仕事中のビジネスパーソンを含む幅広い人々が注目した様子を反映しました。

時間ごとの利用者数も大きく反応

1時間ごとの利用者数(HAU)を見ると、3月22日は午前8時から11時までの試合開始前後に非常に高い状態が続いたほか、日本戦を配信した時間の利用者数は顕著に利用者数が伸びました。

筆者が注目したのは試合後です。試合後の時間別利用者数は試合終了後も休日並みに高い状態が続きました。試合の録画中継を好きな時間に「見逃し視聴」できることも大きく寄与したと見ています。

目玉のイベントを起爆剤に爆発的な普及に

アマプラがWBCの決勝戦・日本対アメリカの試合を無料配信したことは、日本国内における野球人口の多さや熱狂的なファン層の存在を考慮しているものと思われます。

その結果、試合開始の午前8時から11時までの時間帯には非常に高い利用者数が継続し、試合の録画中継も無料で見られるようになったことから、試合終了した正午以降も休日並みの利用がしばらく続きました。

アマプラがこのような国民的なスポーツイベントの配信を積極的に行う狙いは、既存ユーザーのエンゲージメントを高めていくことに加え、イベント配信を通じて、新規ユーザーの獲得にもつなげるところにあると筆者は見ています。
新規でアマプラを利用したユーザーに、スポーツを含む多様なコンテンツを提供することでリテンション(継続利用)につなげ、生み出されたユーザーとの接点をAmazonのECなどあらゆるサービスに横展開する形です。

Amazonの取り組みは、サブスクリプション動画サービスにおけるグロースパターンとしてよく見られる「目玉となるコンテンツを圧倒的な量で投下する」といった手法の典型例と言えるでしょう。

この手法自体は決して目新しいものではありません。1964年の東京オリンピックの際には、スポーツを見るためのテレビが爆発的に売れました。このテレビが情報を提供するデジタル上のプラットフォームに置き換わった形です。

直近で同様の施策で成功を収めているのが、インターネットテレビ「ABEMA」です。ABEMAは2022年11〜12月、サッカーW杯の全試合を無料で配信したことで、過去最高のユーザー数を記録。ユーザー層の底上げに貢献するとともに、ABEMAの知名度も向上しました。

W杯が終了した後も新規ユーザーが継続して利用しており、投下した目玉コンテンツが持続的な効果をもたらしたことがわかります。新規ユーザーの獲得ができるだけでなく、既存ユーザーのリテンション率を高めることができます。さらに、目玉コンテンツが注目されることで、メディアのブランディングにもつながった形です。

その後のフォローが重要

目玉コンテンツを提供することは、ビジネスの成長にとって非常に重要な要素であることがわかります。しかし、目玉コンテンツだけでなく、その後のフォローアップや継続的なコンテンツ提供が必要であることも忘れてはいけません。

実際、アマプラもABEMAもスポーツイベントの配信後もドラマやアニメ、バラエティなど幅広いジャンルのコンテンツを提供し続けることで、新規ユーザーの獲得やリテンション率の向上を図っています。
また、独自の番組制作にも力を入れており、ユーザーが両アプリを利用するための理由づけも行っています。

競争が激化するエンタメ動画配信系アプリにおいては、魅力あるコンテンツを提供し続けることが、企業のサービスの成長に欠かせない要素であることは間違いありません。
長期的なビジネスの成長を図るためには、魅力あるコンテンツとは何なのかを常に問い続けながら取り組む各社の動きに今後も注目です。

App Ape Labでは、アプリ分析サービス「App Ape」の最新情報や分析結果をご紹介しています。アプリ業界に興味をお持ちの方は、ぜひApp Ape Labをご覧ください。
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