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4年間で2.8倍に成長したコミックアプリ市場で小学館が取り組む、コミックアプリのマーケティングとは【セミナーレポート】

スマートフォン(スマホ)アプリ分析サービス「App Ape(アップ・エイプ)」を手がけるフラー株式会社は2022年8月4日、マンガアプリ「サンデーうぇぶり」「マンガワン」や女性メディア「CanCam.jp」、女性ファッション誌「Oggi.jp」等を運営する株式会社小学館と「コミックアプリトレンドから読み解くアプリマーケティングのヒント」をテーマにオンラインセミナーを開催しました。

セミナーでは、App Apeで蓄積するデータからコミックアプリを取り巻く現在の状況を解説。長年蓄積するコンテンツをデジタルで生かして小学館の事業の柱にしていくために取り組んだ事柄などについて、マネタイズなどを最前線で取り仕切るキーパーソンが語りました。

コミック分野はもちろんのこと、アプリを生かしたビジネスや取り組みを考えるビジネスパーソン全般に響く内容となった本セミナーをレポートします。(記事:App Ape Lab編集長・日影耕造)

登壇者紹介

関根 義介 氏
株式会社小学館広告局 IP企画営業室 
兼 第一企画営業室 
兼 デジタルメディア営業センター
 
プロフィール:ベンチャー企業でメディア事業におけるマネージャーを経験。その後、総合広告代理店で営業に従事した後、2016年7月より現職。
小学館保有ブランドのデジタルメディアにおけるマネタイズに従事し、デジタルコミック・ライフスタイルを担当。

岸本 康太郎氏
フラー 株式会社セールスグループ 
App Ape ユニット ユニット長
プロフィール:ECコンサルティング企業にて単品通販企業の担当に従事した後、2018年3月フラー株式会社入社。現職では、アプリ分析サービス「App Ape」のデータを用いたコンサルティング業務を担当。

エンタメ・コミックアプリの現状

登壇資料より引用

フラーの岸本氏は、コミックをはじめエンタメ全体がデジタルシフトしている現状について紹介しました。

エンタメ関連のうち「comic」「video」「ライブ配信」「音楽」の各カテゴリーアプリの合計MAUの推移(2018年1月〜22年1月)を見ると、「video」のユーザー規模が多いことを提示。YouTube、Amazon Prime Video、TikTokを中心に動画視聴のボリュームが年を追うごとに大きくなっていることを指摘しました。

また、1ユーザーあたりの日間利用時間を見ると、ディズニープラスの時間が長いこともトピックとして岸本氏は紹介しました。

登壇資料より引用

ユーザー規模が突出するvideoを除いた3カテゴリーのMAUを見ると、「コミック」が18年1月〜22年1月の4年間で2.8倍に成長していることを示した岸本氏は「コミックは特に近年注目のカテゴリーと言える」と説明しました。

登壇資料より引用

一方、4カテゴリーのユーザーあたり月間利用時間を見ると「ライブ配信」が最も長く、「直近2、3年で大きな影響力を持ってきたと見ている」としました。

さらに岸本氏は22年6月のAndroidを対象としたコミックカテゴリー売上上位200アプリの合計売上高の推計は3年前の19年6月に比べ4.5倍の規模に成長したことを紹介し、売上規模でもコミックアプリの成長が突出している様子をデータからあぶり出しました。

これらのデータを踏まえ岸本氏は「デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展を背景に、スマホアプリがあらゆるエンタメプラットフォームをアプリとして取り込んだ結果、スマホ内でエンタメ行動が完結できるようになった」との見方を示しました。

App Apeで示したコミックアプリ市場の状況について、小学館の関根氏は「小学館でも電子書籍を扱う部門が毎年前年超えで成長している」と同調。大きなトレンドに乗った成長の大きさを伺わせました。岸本氏も「新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインドア・巣篭もり化の影響で、オンラインコンテンツに課金することへの抵抗が少なくなっている」と実感を述べました。

幅の広さを強みにデジタルに対応する小学館のコンテンツ

登壇資料より引用

コミック市場のトレンドを踏まえ、関根氏はまず小学館が手がけるコミックについて年齢軸と男女別にカテゴライズして紹介しました。年齢層の低い小学生のトレンドを生み出してきた「コロコロコミック」や「ちゃお」を引き合いに「小学生のYouTube視聴時間が非常に長くなっていることから、編集部でYouTubeチャンネルを運営している」と読者の行動様式に合わせたDXへの対応を説明。「こうした幅の広さが小学館のコミックの強みになっている」と指摘しました。

さまざまなコミックを手がける小学館にとっての漫画アプリの位置づけについては「作品と出会えるプラットフォームであり、“漫画雑誌”でもある」と関根氏。作品の認知を高めるとともにオリジナル作品を発信する雑誌的な役割をアプリが担うことを説明しました。

さらにコミックアプリを「電子書店系」と小学館のようにコンテンツを保有する出版社が手がける「出版社系」に区分し、「電子書店系アプリでヒットが生まれて出版社が手がける電子書籍が売れるなど、コミックアプリによっては競合というよりも、お互いがパートナーという意識だ」との認識も示しました。

そんな小学館が漫画アプリを展開する理由の一つについて「流行りをつかむ嗅覚が鋭く、作品がヒットする起爆剤となることが多いZ世代にどのように作品を紹介するかということを考えた時、Z世代が多く触れるアプリを利用することが手法として最適だった」と関根氏。アプリの収益の最大化を目指すというよりも、ヒット作を生み出すという視点でアプリを運営していることを強調しました。

さらに「アプリを展開する一番の売りや強みとなるコンテンツはアプリオリジナル作品だ」と関根氏。「最新話はアプリで読めるという形を守って運営をしていくうちに、「マンガワン」であればバトル系に強い、「サンデーうぇぶり」であればラブコメ・恋愛系といった色がつき、その色に応じてそれぞれのアプリにファンがついて応援してくれるようになり、作品ヒットのトリガーとなる」とヒットの秘密をアプリ運営の視点から説明しました。

企業コラボ施策と相性がいい作品の共通点は「有名というだけではなく〇〇」

「この3、4年で企業から漫画とコラボしたいという声が非常に増えている」とした関根氏は、有名作品を含めて長年タイアップなどコンテンツ活用に関わってきた立場から企業とのコラボレーションに向いている下記の7作品をピックアップしました。

登壇資料より引用

有名作品というだけでなく、今まさにアニメやドラマ、YouTubeなどのデジタルといった具合にさまざまな展開がなされている“旬でおすすめな作品”という共通点がこれらの作品にはあることを関根氏は指摘しました。

登壇資料より引用

具体的な作品と企業とのコラボ事例として、動画やウェブメディア、LINEなどで多角展開した「恋はつづくよどこまでも」×「CanCamブランド」の原作描き下ろし企画や「マンガワン」での「プロミス・シンデレラ」×「ホットペッパービューティー」の「花火大会リベンジ」オリジナル描き下ろし、ゲームの中に作品のキャラクターを登場させるコラボなどについて紹介しました。

これらの事例を示した上で関根氏は「ゲームにキャラクターが登場するシンプルなコラボからさまざまな媒体との連動性のある濃い展開まで多様なコラボができる」と強調しました。

小学館が見つめるファッション誌の変化

関根氏は小学館が手がけるファッション誌におけるトレンドの変化についても言及しました。「読者が見ているコンテンツとして一番はもちろんファッションカテゴリだが、そのニーズの幅の広がりは読者アンケートなどでも鮮明になっている」と関根氏。「例えば女性ファッション誌で男性俳優や男性アイドルグループの企画をしたり、“ヌン活”とそれに合うコーディネートの紹介をしたり、結婚した夫婦への結婚観に関するインタビューをしたりといった読み物にも注目度が集まり、多様になっている」としました。

登壇資料より引用

関根氏は「小学館の女性ファッション誌は数年前からデジタルシフトに動いていた」と述べた上で、フォロワー29万人以上を誇る「Oggi」のインスタアカウントや、インスタ映えする「ナイトプール」の先駆けとなった「CanCam×Tokyo Prince Hotel Night Pool」などデジタル領域を含むトレンド発信で特徴ある事例も紹介しました。

登壇資料より引用

さらにインスタライブやライブコマースとファッション雑誌とのコラボ事例も紹介。「ライブ配信で多くの同時視聴や過去最高のエンゲージメントが生まれたり、配信で紹介した服の売上が発売直後に急増するなど成果が目に見えて出ている。ノウハウも蓄積してきた」と強調しました。

参加者からの質問応答で、「マンガワン」で人気が高まりやすい作品の傾向として関根氏は「主要な読者であるZ世代に刺さるのはバトルものやスポーツもの。またZ世代と近い高校生が主人公の作品に人気が集まりやすい、一方で女性ユーザーが増えておりそれに対応した作品の人気が高まっているのも最近の傾向だ」と解説しました。

「マンガワン」で他社にはない推しポイントは「オリジナル作品があることが一番の強みだが、ユーザビリティーにものすごく気をつかっている。いかに容量を使わずに漫画を読めるかに注力している。特に訴求したい学生世代はダウンロードしたコンテンツの”ギガ”に敏感。そういった部分でストレスを与えないように研究を重ねている」と話しました。

最後に関根氏は「出版社の強みはなんといってもコンテンツを持っていることだ。予算感も取り組みやすいレンジだ。何かやってみたいといった漠然とした問い合わせでもぜひお寄せていただけたら」と締めくくりました。

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